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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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問題の適否、難易度を高校教員がチェック

 代表的な取り組みの一つが、12月から3月にかけて実施する入学前のeラーニングだ。対象は理学部など、理系を中心に14学部47学科・専攻・課程の入学予定者で、1000人余り。2年がかりで自前のコンテンツを開発し、2007年度から本格的に実施している。自宅学習を基本とし、環境が整っていない生徒は高校・大学でも学習可能な体制を整えた。
 コンテンツは、数学や物理、化学などの理系科目。各学部から選出された教員がチームで問題を作成する。付属校の教員は、高校での履修に沿った内容か、難易度は適切かなどを点検。教育支援センター所長の川野辺裕幸教授は、「大学側と高校側の教員総勢約300人がコンテンツ作成にかかわった。これにより、高大連携が強化された」と話す。
 実務的な運営にかかわるのは、各学科の教員1人と各付属校の教員1人以上だ。各生徒がどの問題をどれだけ理解しているかを、管理画面上でリアルタイムに把握。1月下旬には、全生徒に励ましのハガキやメールを複数回送る。これらは個々の生徒の進捗状況に合わせた内容だ。
 生徒からの質問には主に各学科の教員が答える。学科で学ぶ内容と関連付けて回答するなど、生徒が事前学習の重要性を認識し、モチベーションを高められるよう工夫する。高校教員も質問に答える機会を積極的に設け、生徒の理解を助けている。
 この入学前教育の成果は、数字に表れている。全付属校の3年生を対象に実施する統一テストと入学直後の基礎学力テストの結果を比較すると、eラーニングの課題達成度(正答率)の高さに比例して基礎学力テストの結果が上昇するという。
 教育支援センター次長の山本義郎准教授は、「付属校の教員と連携を深め、一体となって、生徒に入学前準備の重要さを伝えたことが、学力向上の原動力となった」と話す。高大連携が深まるにつれ、eラーニングの平均課題達成度も、2008年度入学生59%、2009年度77%、2010年度89%と上昇した。内部進学者以外に対する同様の入学前教育の実施も検討している。


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