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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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目標水準を示し学習を促すテスト

編集部 今回の経過報告では、どのような高大接続テストを構想しているのでしょうか。

佐々木 ポイントは3つあります。1つは、選抜のための集団準拠型テストではなく、達成度を測る目標準拠型のテストになるということ。生徒がそれぞれ立てた目標をクリアしていくという性格を持ちます。
 2つ目は、教科書にある基礎的な内容から出題するということです。大学入試センター試験は基礎的な学力を測るという使命に加え、公平な選抜のための資料を大学に提供する使命があります。そのため、教科書に掲載された題材や既出の問題の利用は、公平性の観点から困難です。
 例えば、2002年度の国語の検定教科書31点のうち、30点に『源氏物語』が、26点に『枕草子』が掲載されています。それにもかかわらず、1997年度から2005年度のセンター試験ではこれらが出題されていません。高大接続テストでは、逆に、教科書に載っている素材から出題すべきだと考えています。
 3つ目のポイントは、高校在学中に、複数回の受験により目標の達成を促すテストであること。全国一斉に全く同じ条件で試験を実施する必要はありません。

想定されている高大接続テスト(仮称)の利用で可能になること

編集部 どのように実施されるのでしょうか。

佐々木 IRT(項目反応理論)を適用します。これは外国では一般的で、アメリカのACT(大学進学統一試験)やTOEFL*で使われています。大きな特徴は、基本的な成績分布を検証してアイテムバンクに蓄えた問題から出題することです。そのため、易しすぎる問題や、難しすぎる問題は省かれています。
 開始当初は紙を使った試験が併存するかもしれませんが、コンピュータで出題・解答する方式により、一人ひとりに異なる出題ができるようにする方向です。そうなると、時間をずらして実施しても、複数回実施しても、公平性に問題が生じません。
 さらに、IRTは絶対的な素点方式ではなく相対的なスコア表示ですから、複数回受験による客観的な点数の比較が可能です。複数回受験すると基本的な出題形式はだいたいわかってきますから、勉強すれば正解できるようになります。
 つまり、高大接続テストは学習を促進するテストであり、効果的に活用するためには目標となる水準を示すことが必要です。それにより、生徒は明確な目標を持って学習でき、高校の教員も、各生徒が目標を達成するためには何が必要か考えながら指導できます。

*TOEFLは、Educational Testing Service(ETS)の登録商標です。

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