特集
Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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多面的視点での選考後の「一面的な評価」の問題

 大学に対する情報公開の要請が高まる中、不透明さが指摘されがちな推薦・AO入試については、特に積極的な情報公開が必要だろう。志願者や合格者の数、選考基準、入学後の成長や各種活動の状況、卒業後の進路などは、高校の進路指導において、その大学の推薦・AO入試を薦められるかどうかという重要な判断材料になるはずだ。
 AO入試の選考基準・方法と、入学後の教育内容や成績等の評価基準とのギャップについて、本特集の中で複数の執筆者が指摘している。多くの大学が、受験生を多面的かつ丁寧に見るという制度の理念に基づいて選考方法に工夫を凝らしながら、それ以降は「多面的」「丁寧」という視点を失っていないだろうか。
 学力以外の指標で高く評価して受け入れたはずの学生を、GPA等学力を中心とする指標のみで評価すれば、他の学生に比べて劣るということにもなりかねない。その結果、「AO入学者は期待はずれ」という判断がなされるのであれば、制度の理念とはかけ離れた一面的な評価にこそ問題があるといえよう。
 推薦・AO入試だからこそ見いだせた優れた能力や資質を伸ばし、一方で、不十分な部分を補うための教育プログラムや学生支援を開発する必要がある。その成果をきちんと評価してモチベーションを高めることも、推薦・AO入試の実施と一体的に検討されるべき課題である。
 推薦・AO入試の趣旨に沿った教育や学生支援を行うには、入学者が「どんな学生なのか」、把握する必要がある。多くの大学が、「アドミッション・ポリシーに合致する適性と意欲を持つ学生を入学させられた」という次元で満足し、学生の実像を詳細にとらえないまま全体の中に埋没させていないだろうか。
 学力はもちろん、それ以外の能力、資質についても選考時に測ることができない部分を中心に、把握する必要がある。高大接続テスト(仮称)が導入されれば、選考時に学力を確認するための選択肢が増える。入学直前・直後の調査に始まり、その後も継続的に調査を行って成長度を確認すれば、教育プログラムや学生支援サービスのブラッシュアップにつなげられる。他の入試方式を経た学生のデータとの比較によって、きめ細かい対応が可能になるはずだ。
 その大学の推薦・AO入学者がどんな学生でどのような成長を遂げているかというデータは、情報公開の対象として高校からの期待も高いと考えられる。


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