特集
Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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高大連携が入学前教育を進化させる可能性

 推薦・AO入学者の入学時の能力は、基礎学力の面では、一般入試・センター利用入試による入学者に比べて低い。しかし、社会的な基礎力の中のリーダーシップは、AO入学者のほうが上回っている。また、その大学を強く志望していたという者は、推薦・AO入学者のほうが多い(P13図表7参照)。こうした大学に対する愛着に応えつつ、リーダーシップを伸ばすような教育と学生支援を行えば、推薦・AO入学者は大学の個性を体現した中核的な学生に成長するはずだ。
 不足している基礎学力については、高校教員の75%余りが、大学と共同して早期合格者に継続的な学習を促すしくみを検討したいと考えているという調査結果があり(P14図表11参照)、高大連携による基礎学力向上が期待される。
 大学側には、入学前教育について、推薦・AO入学の受け入れ理念に沿った教育のための準備、ガイダンスという新しい視点も芽生えつつある。長崎大学が2011年度の入学前教育から導入する、カリキュラム・ポリシーへの理解を促すプログラムは、その一例といえる(P26参照)。
 合格の早期決定には、受験生が他の大学に目を向けなくなり、自分にとっての「最良の出合い」の機会を放棄してしまうという問題もある。受験生や保護者にとって推薦・AO入試は、「学力試験がない」「早く決まる」ということのインパクトがあまりに強く、安易な選択に流れるケースもあるだろう。
 大学、高校、受験生、保護者それぞれが大学の特色や推薦・AO入試の趣旨に対する自覚・認識を共有し、互いの責任ある選択によって「最良の出合い」をつくり出していく必要がある。その起点となるのはやはり、大学の適切な情報発信、趣旨に沿った入試や教育の実施と、これらに対する信頼感に基づく高校との連携だといえよう。


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