特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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“Why”を伴う行動こそが重要

 近年、大学では「何かをできるようになる」という観点から学生を育成している。それ自体はわかりやすく、かつ意味のあることである。もちろん、学生はできることが多い方がよい。しかし、一方で「できることが多ければそれでよい」というわけではないことを認識しておくべきである。学生に必要な能力は、「できること」を最大限活用して、主体的に何かを成し遂げることである。
 では、大学はそこで何ができるだろうか。近年の若者論に頼っても解決策は生まれない。また、「学生に主体性が全くなくなった」というのは言い過ぎである。以前と比べて変わったのは、「何に対して主体性を発揮するか」という点である。この点をしっかりと認識することが、大学の人材育成の出発点になる。
 「主体性」は、極めて本人の感情面に支えられるものである。「やり抜きたい」「完成させたい」「たどり着きたい」「見返したい」「できないなんて嫌だ」という感情が起きなければ、不確実でリスクのあることには取り組まない。
 この点を強く認識し、行動を起こすための“Why”を考える力、物事に対して自分の中で強い動機付けを起こす力を養い、その力によって何かを成し遂げる経験をいかに積ませるかが、人材育成の鍵となる。“What”と“How”というゴールを与え、そこに向けて頑張らせるという従来の大学教育は、当然やらなくてはならない。基礎的な学力を身に付けていなければ、「やりたい」「応えたい」と思っても何もできないからだ。その際に必ず“Why”をセットにして考えさせることが重要である。
 「これをやろう」と思うときの“Why”は、「誰かに言われた」「何となくそう思った」「テストに出た」ということではない。自らの価値観とどうつながって「やろう」と思えたのか、自分の言葉でしっかり語れるような経験をたくさん積み、「自分を考える」「自分と向き合う」ことができる教育を行わなければならない。


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