特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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企業の要求水準が高まり大学単独での達成は困難

 それでは、なぜ日本の大学でコーオプ教育が広まらないのか? それは、「産学連携」という言葉に多くの大学人がこれまで(恐らく今でも)拒否反応を示し、職業人を育成するための教育を軽視・蔑視(べっし)してきたためであろう。企業の要望に耳を傾け、それを教育内容に反映することなど、大学は考えられもしなかった。
  それがどうであろう。大学の機能別分化の一つである「幅広い職業人養成」に比重を置く大学を対象とする、文部科学省の「就業力育成支援事業」に442件もの申請があった。背景には、企業が求める能力水準の高まり、若者一般に対する企業の評価の厳しさがある。
  知識基盤社会といわれる今日、大学進学率は上昇し、大学は社会に有為な人材を送り出す最大の供給源としての役割を求められているが、大学だけの力で、このような社会の要望に応え、学生を職業人として育成するには限界がある。人材の育成を進めるうえで、産業界と大学の協力が鍵であることは、論を待たない。
  就職活動の早期化により、授業が成り立たない等の弊害は確かにある。しかし、日本学術会議「大学教育の分野別質保証の在り方検討委員会」が指摘するように、「抑制すべきは、意義の乏しい過剰な『選び合い』が徒に早期化していくことであり、学生が自身の進路を適切に選択することができるよう、企業を含めた『外の世界』を知る機会は、むしろ早期から整備していくことが重要」である。そのための具体的方策の一つが、コーオプ教育であり、産学が協働する意義がある。
  京都産業大学では、2003年から「日本型コーオプ教育プログラム」として、大学での学びと就業体験を「サンドイッチ方式」で4年間交互に繰り返す「O/OCF(オン/オフ・キャンパス・フュージョン)」に取り組んでいる。学期中はオンキャンパスで授業を行い、長期休暇を利用して毎年必ず就業体験(オフキャンパス)に参加する。社会の現場で実務を体験する過程で、学生は職業観を育み、現場に求められる能力を理解し、自らの興味や関心を明確にし、学問の重要性を再確認する。


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