特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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産学官による人材育成に必要な伝統学部の協力

 最後に、観光分野における産学官連携による人材育成の課題を示す。
 一つは、観光産業界も加え、教育成果を評価する体制をつくることだ。どのような能力をどの程度求めているかを、観光産業界の観点から大学側に明示するとともに、教育成果がそれに適合しているかという評価にも加わってもらう必要がある。
 もう一つは、大学内において、商学や経営学など、伝統的な学問領域の教員から協力を得ることだ。観光産業界が求める科学的視点を持った経営人材を育成するには、これらの教育プログラムと観光教育を融合させていく必要がある。
 しかし、伝統的学問領域の教員の間では、新しい学問である観光分野に対する評価が低く、教育・研究の対象として新たに取り組むにはインセンティブが低いという問題がある。政策的にも、個別大学の経営においても、観光分野の教育・研究には十分な予算措置が講じられておらず、メリットよりもリスクのほうが大きいこともその要因といえよう。
 現状を変えるには、大学側は予算的に本腰を入れた観光教育へのてこ入れを行う必要があるし、行政側もかなりの覚悟を持って予算措置、大学への支援体制を構築する必要がある。そうすれば、伝統的学問領域の教員の協力を得やすくなり、産学官連携による人材育成の取り組みが前進するはずだ。


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