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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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企業は明瞭なDPを期待

 経済団体が大学教育への要望をまとめたいくつかの提言には、「学生の質の保証、担保」という言葉が出てくる。教育の仕上げの段階を侵犯しておきながら、質の保証を求めることには首をかしげたくなる。卒業論文のテーマや研究室の配属すら決まっていない時点で、一体何によって学生の資質を見極めようとしているのか。大卒の肩書さえあればいいと考えているのではないか。
 これは、大学教育に対して企業が信頼や期待を抱いていないことの表れと言わざるを得ない。しかし、われわれは憤る前に反省しなければならない。関西経済同友会は、2009年7月に出した提言で、具体的なディプロマ・ポリシー(DP)をウェブサイトで公表していない大学の多さを問題視した。企業や社会が求めているのは、建学の精神の単なる言い換えや、抽象的な表現によるDPではなく、卒業時点でどんなことがわかっていて、何ができるかという、具体的で明瞭な人材像だろう。
 私大連盟の教育研究委員会は、日本の大学としての分野別ミニマムリクヮイアメントを定めるべきだと考えている。その学部を出た者が最低限身に付けているべき能力を共通化し、さらに各大学の個性・特色を反映した付加価値を乗せてDPを策定するというのが、あるべき形だろう。
 多くの大学がこうした形でわかりやすいDPを示せば、企業は自社が求める人材像と照らし合わせながら、大学の教育が実を結ぶ時期まで採用を待つようになるのではないか。
 大学はDPに基づいて4年間のカリキュラムを組むわけだが、4年次の夏休みまで採用を待ってほしいなら、その時点で保証できる能力も明示すべきだ。そうすれば、企業は大学の成績評価と自社の試験によってその能力を確認したうえで、採用の可否を判断できる。そこでは、企業の信頼を得られるような厳格な成績評価を各大学が行うことが前提になる。
 結局、どこまで教員の意識改革ができるかが、採用早期化の是正においても問われている。


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