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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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厳格な成績評価を期待

 企業がすべきは、青田買い前提の採用スケジュールを見直し、通年採用を実施すること。当社では従来、通年採用を建前としながら、実際には春採用でほぼ充足してきた。まずは一歩前に踏み出そうと、2010年度は春採用の人数を従来の7割にとどめ、残りを秋採用に回した。4年次の夏までしっかり勉強してもらい、優秀な人材を見いだしたい。
 一方、大学には、採用早期化の是正によって回復する本来の教育期間をフルに使って、人材育成の責任をしっかり果たしてほしい。学生が勉強しなくなったといわれるが、就職活動の忙しさに加え、大学の卒業認定の甘さにも原因があるのではないか。ゼミを充実させて議論の場を数多く経験したり、卒論に真剣に取り組んだりすることによって、幅広く深い思考力が身に付くはずだ。実践的な英語力の修得も強く期待する。
 そして、厳格な成績評価によって卒業生の質を保証してほしい。同じような成績の学生でも、出身校によってずいぶん差がある。同じ大学から2、3年も続けて採用すれば成績評価が甘いか厳しいかわかるし、おのずと信頼の置き方も違ってくる。
 大学と企業が協力してインターンシップを充実させれば、就職活動に割かれていた学生の貴重な時間を有意義に使えるのではないか。1年次から3年次まで毎年、違う企業で就業体験を積むことによって、就職に対する意識も変わるだろう。
 どの企業も大学教育に期待しているし、学業成績を大切なものと考えている。しっかり勉強して優秀な成績を修めた人材には、まず、外れがない。学んだことがすぐに仕事で役立たなくても、確かな思考力が長い人生の中で確実に効いてくる。
 企業は大学の教育の邪魔をやめて、教育の成果としての人材を評価し、採用する。大学は教育に責任を持つ。どれも当たり前のことだが、互いに働き掛け、応えることによって、着実に現状を変えていくべきだ。


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