学士課程教育体系化のステップ

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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教育課程を俯瞰するカリキュラム・マップ

 リストの限界は、科目を学習していく順序、科目と科目の内容がどの程度関連しているのかを、表現できていないことにある。この限界を補うのがカリキュラム・マップ(以下マップ)である。マップは、学習内容の順次性と科目間の関連性を同時に図示化したフローチャートやダイヤグラムである。企業のプロジェクトマネジメントにおいて使われている作業工程表と同様のものである。マップ開発の目的は、教え手である教職員と学び手である学習者の双方が、「見える化」されたカリキュラムを共有することにより、学士課程教育全体の俯瞰を可能とすることにある。文章で表すことに比べ、情緒面、注意面、教示面、支援面、記憶面で教育・学習効果に優れている。

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図表3:教育学部学校教員養成課程のカリキュラム・マップ

 2008年度の教育コーディネーター研修会はマップの開発をテーマに開催され、第1回研修会ではマップの作成手順について説明した。この際、学問分野によって知識構造は異なり、表現方法はさまざまであってよいことが強調された。その後、学部ごとにシミュレーションを実施した。具体的には、各学部で開講されているすべての授業科目名を記載したシールを配付し、学習内容の順次性と科目間の関連性を意識して、模造紙上に配置してもらった。参加者からは「自分の学部でこれだけの科目が開講されていることを初めて知った」というコメントもあった。
 第3回研修会では、事前に提出された各学部の作成途中のマップについて、①全体の構造や流れがわかりやすいか、②一目で授業科目同士の関係がわかるか、③興味深く見てもらえ記憶に留まりやすいか、④学生にとって自らの学習内容の把握に役立つか、という4つの視点から参加者が相互にチェックし、フィードバックを行った。

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図表4:工学部情報工学科のカリキュラム・マップ

 最終回の研修会では、完成したマップの最終報告を各学部に行ってもらい、次年度以降にウェブサイトで公開してもらうよう依頼した。完成したマップはさまざまで、学問分野の多様性を表現したものとなった(図表3、4)。


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