私を育てたあの時代、あの出会い

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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先輩教師の言葉

誇り高い教師たちを結び付けるのは
生徒への思いです

元・長野県長野高校校長 高野 幸
 着任した当初、長野高校の学力低下は危機的状況でした。しかし、古き良き時代を知る多くの先生方は「勉強は生徒がするもの」と考え、学校全体として共通認識を持つには至っていませんでした。米澤先生を始めとする一部の若い先生方が、「今の生徒にはそれだけでは通用しない」と感じ、何か手を打たなければともがいていたのです。
 教師は良くも悪くも誇り高い生き物です。学校を変える時も強引にやっては失敗します。だから私は徹底的に議論しました。討論の末の決定であれば、たとえ反対していても受け入れてくれるからです。方向転換には時間はかかるけれど、ひとたび舵を切れば一気に進む。学校は大きな船のようだと思います。
 米澤先生は、改革を求める若い教師の中心的存在でした。彼は、生徒に対して、少し努力すれば実現できる目標を提示し、達成する喜びを感じさせて、やる気を高めるのが上手でした。そういう技術を、ほかの若い先生方は米澤先生から学ぼうとしていました。生徒のために、お互いに教育力を高め合おうとしていた彼らは、私の取り組みを後押ししてくれました。長野高校の改革は、1人の力ではなく、生徒を中心にした教師のつながりがあったからこそ実現したのです。
 先生方に生き生きと働いてもらい、責任はすべて自分が取る。校長の仕事はこれしかありません。校長が主役になったり、活躍する教師をねたんだりしてはいけません。先生方の能力さえ引き出せば、学校は変わります。事実、長野高校での取り組みの多くは、先生方の発案でした。
 先生方との関係が対立から始まったのは事実ですが、最後はとても良い関係が築けました。伝統校の改革は校外からも注目され、時には誤解をもとに批判されたこともあります。その時、「それは事実とは違う」と最後まで私を守ってくれたのは、私と最も対立していたはずの先生でした。考え方は違っても、「生徒のため」というその思いさえ理解し合えれば、仲間としてお互いに支え合えるのです。
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