指導変革の軌跡 千葉県立姉崎高校
VIEW21[高校版] 先生方とともに考える 新しい進路指導のパートナー
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「わんこソバ方式」により生徒の達成感を刺激する

 最も工夫したのは、課題の出し方だ。取り組みを始めた当初は、1回の授業でB4判のプリント1枚に取り組ませていた。ところが、分量が多すぎて集中力が持続せず、生徒の学力差にも対応ができないことが分かった。そこで、04年度の2学期からは、プリントをA5判表裏に変更。10〜15分で終わる分量を1ステップとして、基礎・標準・応用の3段階の教材を準備した。1ステップが終了すると、次のステップに進める方式だ。 
 「本校ではこれを『わんこソバ方式』と呼んでいます。生徒の学力によって取り組む分量が明確になり、生徒自身が自分の得意、不得意を的確に把握することができます。また、1回の問題数が減ったことで、満点を取りやすくなりました。1ステップが終わる度に『よくやった』と褒め、生徒が達成感を得られるようにしています」(御園生先生)
 あくまで生徒の学習意欲向上の取り組みという前提に立ち、評価方法も工夫した。テストの得点ではなく、生徒が取り組んだプリントの量による評価を6割、出席率や取り組む態度の評価を4割とし、努力すれば報われる仕組みを重視した。  「マルチベーシック」により、生徒の授業態度は大きく変化した。渡邉教頭は、授業規律や学習態度を育む場になったと述べる。
「『マルチベーシック』では、一つの授業に3人の教師が入るため、生徒は課題に集中せざるを得ず、おのずと忍耐力・集中力が身に付きます。そうした授業態度が通常の授業にも波及して、学校全体が落ち着いた雰囲気になりました。『マルチベーシック』は、すべての授業の基礎になるトレーニングの場なのです」
 自学自習を繰り返す中で、主体的に学習に参加する態度も養われている。英語の授業では、分からない単語があったら、全員が自分で辞書を引くようになった。また、教師が次のプリントを渡すと、生徒から「ありがとうございます」と返ってくるようになった。教師に支えられているという思いが、自然と感謝の言葉となって表れるようになったのであろう。
 生徒の意欲や学力の向上に伴い、「マルチベーシック」の方法も変わりつつある。ステップ1〜3を30分程度で仕上げてしまう生徒が出てきたため、ステップ4、5とより高いレベルの課題を作った。教科によっては、SPIや各種資格試験対策のプリントを用意し、希望進路別の学習にも対応している。

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