学校外教育活動に関する調査

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第1章 子どもの「運動格差」を生じさせるものは何か?


Benesse 教育研究開発センター研究員 佐藤暢子

◆運動能力は学力と関係がある?◆

image文部科学省が行った「体力・運動能力調査」(2008年度)の結果をみた橋下知事は、大阪府が「全国学力・学習状況調査」の結果もふるわなかったこととあわせ、「ふつう、勉強ができなければ体育はできるのに」と嘆いたそうです。一方で、全国学力・学習状況調査で上位を誇る秋田県や福井県が、体力・運動能力調査においても好成績を収めたことも注目されました。

学力と運動能力の関係をにわかに結論づけることはできませんが、それを考えるヒントとなる題材はありそうです。このほどベネッセ教育研究開発センターが全国の保護者を対象に行った「学校外の教育活動に関する調査」の分析から浮かび上がった、「運動格差」ともいうべき状況をここで紹介したいと思います。

◆成績の高い子ほど運動をしている◆

この調査では、学校外での習い事や地域の活動、放課後の部活動も含めて、この1年間で何らかの運動やスポーツに定期的に取り組んできたかどうかをたずねています。その結果を学校での成績(ただし保護者による評価)とかけ合わせたデータをご覧ください(図1−1)。小学生においても中学生においても、学業成績が高いほどスポーツに取り組んでいる子どもの割合が高くなっています。

ところで、子どもの国語や算数の点数は、保護者の年収が多いほど高い、という分析結果が先ごろ公表されました(文部科学省「平成20年度全国学力・学習状況調査追加分析」より)。我々が行った調査においても、データの掲載は省きますが、同様の結果が出ています。

それでは、スポーツ活動は保護者の所得に関係があるのでしょうか。運動・スポーツの活動率を世帯年収別にみてみたところ、年収が多いほど、活動率が高いという結果が出ました(図1−2)。小学生の場合、年収が高いほど習い事をやらせているケースが多いことと無関係ではなさそうです。しかし、比較的安価な費用でできる部活動がスポーツ活動の中心となる中学生においても、その傾向が保持されているのは興味深いところです。

◆所得が低い家庭の子どもはスポーツ活動を断念?◆

ちなみに、「子どもにとって運動やスポーツは必要だ」という考えに対する賛否をたずねたところ、保護者の年収による差がまったくつきませんでした(図1−3)。我が子にスポーツをさせたいという思いを、ほとんどの親が持っているにもかかわらず、実際には費用がネックとなって活動率にはばらつきが生じてしまっている可能性があります。

それを裏付けるようなデータもあります。運動やスポーツの「活動にかかる費用の負担が重い」かどうかをたずねたところ、世帯年収が低いグループほど「そう思う」とする割合が高いのです(図1−4)。年収400万円以下のグループでは4分の3にも達します。また、実際子どものスポーツ活動にかける金額が、年収により異なっていることもわかっています。(『子どものスポーツ・芸術・学習活動データブック』より)

今回私たちが行った調査において、保護者の所得格差は、子どもの学力・学習機会のみならず、運動・スポーツを行う機会の格差にも及んでいることが明らかになりました。家庭の環境を超えて、子どもたちにいかに学習や運動の機会をつくってあげられるのか? 社会全体で考えていきたい問題です。

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