移行措置対応のポイント 第2回 「活用」から見る算数の授業
VIEW21[小学版] ともに語る、考える。ベネッセの教育情報誌
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齊藤 例えば、新学習指導要領の解説には、5年生の図形の領域に「三角形や四角形の性質を見いだし、説明することを通して論理的な考えを育成することが大切」と書かれています。授業例【2】の「四角形の内角の和」の学習は、答えの「360度」を暗記させるだけなら5分ですみます。しかし、学習のねらいは論理的な思考力の育成ですから、既習内容である三角形の内角の和を基に、子ども自身に演繹的に考えさせ、説明させることが大切です。
中村 こうした授業では、教師の問い掛けが鍵を握ります。例えば、「三角形に分けられそうだね」とアイデアを直接伝えるのではなく、「前に似たような学習をしたね」など、子どもの発想を引き出すような問い掛けをして、子どもに自力で既習内容と結び付けさせるのです。
齊藤 確かに、問い掛ける言葉は重要だと思います。まず何を考えなければならないのかを明確にして教師と子どもで共有し、既習の内容に結び付けたら良い、という視点をうまく提示出来れば、子どもはおのずと活用します。行く行くは、子ども自身でこのように考えられるようにもなります。
「活用」の視点を取り入れた授業例【2】
単元 図形の性質─四角形の内角の和(5年生)
ねらい ・三角形の内角の和(180°)を基にして、四角形の和が360°になることを演繹的に説明させる。
・条件を変えながら、新しいものの見方にかかわろうとする態度を育てる。
 NG例 三角形の内角の和は180°、四角形の内角の和は360°という知識や、角度を測り取る技能のみ習得する
「活用」の視点を取り入れた授業例【2】
1. 図1で三角形の内角の和を確認する。図1−2の四角形を比較して角が一つ増えたことを確認。
2. 図1−2は二つの三角形から出来ていることから、四角形の内角の和が360°であることを確認する。
※以前に習得した内容が強化される

3. 分割方法を変更する
 「分割の方法が変わっても内角の和は360°になるのだろうか?」と問い掛ける。
図2のように対角線で分割すると、既習事項を使って四角形の内角の和(360°)が求められる。
図3のように、辺上に点Eを置くと三角形が三つになる。「半円部分に一直線(2直角)=180°が余計に加えられていること」を確認する。
図4のように、点Eの位置を図形内に移動。「点Eの周りに出来た円(360°)の角度が余計であること」を確認する。図3と図4では、なぜ540°、720°にならないのかを説明させる。
※内角の和の学習過程でも、間違っている理由を問い掛けることによって、既習事項を用いながら間違いの根拠を判断し、他者に論理的に説明する学習が出来る

4. 和の求め方を比較する。三つの式を見比べ、どの式も「180×2」になることに気付かせる。
5. 図5のように点Eを図形外に移動し、発展的な場面の解釈に挑戦させることも出来る。
*授業例【1】〜【4】は、中村先生・齊藤先生が提案した内容を編集部がまとめた

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