特集 教員養成システムの論点

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
  PAGE 22/27 前ページ  次ページ

【現場レポート 1】信州大学教育学部

4年間にわたる臨床教育で課題認識を深める

学生と社会のニーズが一致

 信州大学教育学部は2005年度から、学生が学校などで児童・生徒の教育に直接携わる臨床教育を、4年間毎年実施するカリキュラムとして体系化した。臨床教育推進室を発足させ、臨床教育科目の運営体制も強化した。
 出発点は十数年前、教育実習を終えた学生から出た「もっと子どもたちと触れ合いたかった」との要望だ。臨床教育推進室長の土井進教授は、「教育実習では、学生は授業づくりで精いっぱい。授業以外の場でも本当に児童・生徒とやっていけるという、教師としての自信を得たかったのではないか」と分析する。
 94年度から、土曜日に地域の子どもと学生が触れ合う「信大YOU遊サタデー」を開始した。子どもを安心して預けられる場所を求めていた地域のニーズとも重なり、好評を博した。
 この試みをきっかけに信州大学教育学部では、体験や実践を重視する臨床教育を充実させた。96年度には1年生が附属の幼稚園・小・中学校で教育活動をサポートする科目「教育参加」を導入。00年度には「学校教育臨床演習」、02年度には「学校教育臨床基礎」を、それぞれ新設した。05年度からスタートした新カリキュラムは、こうした取り組みを発展させたものだ。
 新カリキュラムの導入と同時に、教育体制も強化した。臨床教育のウエートが高まれば、教育委員会や学校との連絡窓口を一本化したり、科目間で指導内容を調整したりする必要が出てくる。臨床教育推進室がこれを担い、土井教授以下8人の教員が科目運営を統括している。
 臨床教育を主軸に置いた教員養成のシステムは、本年度から始まった教員養成GPに採択された。赤羽貞幸教育学部長は「学生に教師としての『実践的な指導力』をつけさせるために積み重ねてきた試みが、体系的なカリキュラムとして結実した。これを契機に、今後も深化させたい」と語る。


  PAGE 22/27 前ページ 次ページ
目次へもどる
大学・短大向けトップへ