特集 教員養成システムの論点

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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段階ごとに実証研究を実施

 「教育臨床基礎」は1年次の必修科目(2単位)で、1年間を通して、附属の幼稚園や学校の様々な教育活動に参加する。授業の補助をはじめ、遠足の引率、運動会の運営、クラブ活動の指導補助など、各学校が提示したメニューから学生が選択し、派遣先の担任教員の指導の下、1回2時間程度の活動を年間10回以上体験する。
 赤羽学部長は「自分がかつて学んだ場所を、教師としての視点から見つめ直すことが狙い。教師になるための勉強を始める動機づけとしても効果的」と語る。04年度のアンケートでは、教職に「ぜひ就きたい」「できれば就きたい」と答えた学生の割合が、入学時の60.0%から、この科目を履修した1年次修了時には80.4%に増えた。
 2年次は「教育臨床演習」(2単位)が必修。地元の長野市教委と連携して、市内の公立学校(小学校20校、中学校10校)に1週間滞在し、教材研究、生徒指導、学校経営や学級運営など、教員の仕事の実態を理解する。授業は担当しないが、公立学校にフルタイムで通い、学校や学級の現場を体験する「ミニ教育実習」といえる。
 3年次の必修科目は「教育実習事前事後指導」(1単位)と「基礎教育実習」(4単位)。基礎教育実習は、所属する課程の免許(主免許)の取得に必要な教育実習で、附属学校で実施する。7月に1週間、8〜9月に3週間と実習期間を2回に分けた。教育哲学、臨床教育学などを専門とする山口恒夫教授は「最初の実習を振り返る時間を持つことで、後半の実習がより充実する。実際の教育実習は4週間しかないが、2カ月間近くも高い意識を持続できる」と、その効果を説明する。
 4年次の「応用教育実習」(2単位)は必修ではないが、他の課程の免許(副免許)取得に必要な実習で、95%以上の学生が履修する。このほか全学年が対象の選択科目「地域教育演習」も開設。自然の家や特殊教育施設など地域の生涯学習施設で半年間にわたり、週1回定期的に活動して、児童・生徒と接する。
 信州大学教育学部では、97年度から教育理念として「臨床の知」を掲げている。山口教授は、「教育現場で直面する複雑な状況に対する、適切な判断能力や応答能力」と説明。この力を育成するためには、体験を振り返りそれを自らの課題として認識することができるような、体系的な指導が必要だ。そこで各臨床教育科目では、現場での指導教員の指導だけでなく、実習後の授業で、グループ討議やロールプレイ、ポートフォリオ作成など、大学側の教員も積極的に関与して、振り返りと課題認識を深めさせる。
 赤羽学部長は「体系的なカリキュラムを段階ごとに分析・実証研究し、教員養成の望ましいプロセスを確立すると同時に、大学教員の指導力向上にも役立てたい」と話す。


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