特集 生徒を大人にする「生徒指導」
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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学校行事を通して「中部高生」をつかませる

 生徒同士が支え合いながら成長する仕掛けは、同校の学校行事に最もよく表れている。学校行事が生徒の生きる力の土台を育むと、同校は確信しているからだ。
 「勉強さえできればよいという考えは、本校にはありません。友だち同士で支え合う人間関係や、目標に向かってやり遂げる達成感の中から、生徒は自分にもできるという自信を持ち、生きる意欲を育むのです。そうした人間としての根源的な力が、自ら学び、進路を切り拓いていく力になるのです」(荒井校長)
 中でも、生徒が力を注ぐのが9月に行う体育大会だ(写真)。1〜3年生の各クラスが縦割りで四つの団に分かれ、団対抗戦の形で行う。各団は、団長を中心として3年生がリーダーとなり、パートリーダーの下、綿密な練習計画を立て、競技・応援指導を行い、後輩を牽引(けんいん)していく。

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写真  体育大会は、青龍、白虎、朱雀、玄武の4つの団の対 抗戦で行う。所属する団は3年間変わらないため、ノウハウや個性は団ごとに代々受け継がれていく。同窓会では、卒業生がそれぞれの団旗の下に集まり団歌を熱唱するという。

 生徒指導部長の五艘(ごそう)孝芳先生は、「各団からは、毎日の練習計画書が学校に提出されます。例えば『今日は○時から白虎団は応援の練習を行う。遅れるな!』と書かれた白虎団通信を、教師は毎朝印刷する手伝いだけするのです」と話す。2学年主任の柳原英志先生は、「例えば、リレー競技などでは、団の中で予選を行い、生徒自身が選手を選びます。まじめに精一杯練習する生徒をリーダー(先輩)は見ています。選ばれた選手(後輩)は、頑張ればきちんと評価される学校であることを実感するのです。その中で、生徒は『中部高生』である喜び、帰属意識が高まります。私は、学年を運営する上で、2学期は学校行事や部活動での先輩との交流の中から『中部高生とは何かをつかませる』ような指導を意識しています」と語る。
 進路指導部長の堀由紀男先生は、「各団とも勝つためにいろいろな工夫をします。私は物理担当ですが、綱引きのタイミングを聞きに来る生徒もいるんです」と言う。
 練習は大会の9日前からというルールがあるため、準備に多くの時間を割けるわけではない。いかにリーダーが緻密に計画を立て、団としてまとまって練習していくかが勝利の鍵となる。
 「指導力不足のリーダーには、周りから容赦なく批判が飛んできます。生徒は挫折感を味わうこともありますが、最後まで支えてくれるのも同じ団の仲間です。挫折を乗り越える経験、集団で頑張る経験が、生徒を大きく成長させるのです」(新夕先生)


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