未来をつくる大学の研究室 発達心理学
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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 このように発達心理学の研究は、まずは問題意識からメタ理論(※3)を導き、適切な実験や実証を選択し、それを地道に実践する――という流れで進めるケースがほとんどです。
 言葉の習得過程の研究を幼児期の言語学習に生かすなど、発達心理学の成果は教育などに生かされています。しかし、発達心理学には、ロボット開発のように、社会を一瞬に変える力はありません。皆さんは、サン=テグジュペリ(※4)の『星の王子さま』を読んだことがありますか。この本には、「大切なものは、目に見えない」という印象深いメッセージがあります。脳の働きや心の動きも目には見えません。その重要ななぞを解き明かすのが、私たちの役目なのです。

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高校生へのメッセージ
「問い」を持ち続けることが大切
 毎日を漫然と過ごさずに、常に「問い」を探し求めてください。それがすべての出発点です。発達心理学では、情報を鵜呑みにせずに「本当か?」と考える批判的な目を持ち、事実に基づいて論理を組み立てる能力が必要になります。高校時代から自分で問いを設定し、しっかり考える訓練を積んでほしいですね。そして、好きな科目だけでなく、幅広い分野に興味を持つことも大切です。深い穴を掘るためには、広い面積を掘らなくてはなりません。ある分野を突き詰めるときには、一見、関連がない別の分野の知識が必ず役に立つのです。
用語解説
※3 メタ理論 研究テーマに対する、かなり広い仮説を指す。
※4 サン=テグジュペリ フランスの作家で郵便輸送のパイロット。1943年にアメリカで出版された『星の王子さま』は、児童文学ながら、大人向けの示唆に富み、今も世界で読み継がれている。ほかの著書に『夜間飛行』『人間の土地』など。

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