特集 「大学入試分析」を生かす
森政行

▲山形県立山形南高校(09年4月から新庄北高校最上〔もがみ〕校教頭)

森政行

Mori Masayuki
教職歴30年。同校赴任歴3年。進路指導主事。英語科。

遠藤淳一

▲山形県立山形南高校

遠藤淳一

Endo Junichi
教職歴20年。同校赴任歴14年目。進路指導部。3学年担任。英語科。「教師側の自己満足で終わりたくない」

寺崎昌尚

▲山形県立山形南高校

寺崎昌尚

Terasaki Masataka
教職歴29年。同校赴任歴8年目。進路指導部。3学年担任。国語科。「意欲を持ち続ける指導をしていきたい」

柴田雅樹

▲山形県立山形南高校

柴田雅樹

Shibata Masaki 教職歴22年。同校赴任歴4年目。3学年担任。数学科。「自信を付けさせようと、模試の対策も行いました」

奥山浩之

▲山形県立山形南高校

奥山浩之

Okuyama Hiroyuki
教職歴14年。同校赴任歴6年目。3学年担任。数学科。「1・2年生の指導をもっと充実させたい」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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センター試験重視から個別学力試験重視へと変更

 実績向上の大きな要因は、1年生時から東北大を見据えた指導を続けてきたことだ。同校で最も多い進学先は山形大だが、入学時には東北大を志望する生徒の方が多い。2年生3月時点でも90人近くいる。しかし、大半の生徒が部活動に打ち込み、高校総体県予選の終わる3年生の6月に本格的な受験態勢に入るため、その時点での学力は他校生に大幅な後れを取っている。実力がないまま、東北大対応型の模試を受けて自信をなくし、東北大をあきらめる生徒が多かった。例年、3年生の7月には50人に減り、実際に受験するのは30人程度で、合格はその半数だった。
 「生徒が入学時に抱く東北大への夢をかなえてやりたいと思いました。しかも、東北大の個別学力試験は、高校での基礎学力をしっかり身に付けていれば解ける問題ばかりです。本校の生徒にはその力が十分あると思いました」と、1年生時から担任をしてきた柴田雅樹先生は話す。
 従来の指導はセンター試験重視だったが、個別学力試験重視に切り替えた。東北大は個別学力試験の配点比率が高いという理由の他に、センター試験対策でも個別学力試験対策が効果的と考えたからだ。柴田先生は担当教科の数学を例にこう話す。
 「センター試験の数学は、標準的な問題ばかりですが、制限時間に対して問題量が多い傾向にあります。ミスなく速く解く力が高得点の鍵ですが、その力を付けさせるにはできるだけ多くの演習を積ませるのが有効だと考えました」
 英語についても同様だと、遠藤先生は指摘する。
 「一つひとつの問題は難しくありませんが、設問量が多い。解答に必要な情報をいかに素早く見つけ出すか、情報処理能力が問われています。また、英語の感覚を問われるような出題も増え、コミュニカティブな英語力を測る傾向が強まっています。対策として、演習量を増やす必要がありました」
 例年は3年生2学期からセンター試験対策を行うが、この学年はセンター試験1か月前まで個別学力試験対策の演習を積み、センター試験対策は1か月間に集中して行った。

東北大の入試問題に1年生時から取り組ませる

 東北大を目標に個別学力試験対策重視を指導方針に掲げたが、部活動引退までに基礎学力を身に付けていなければ東北大合格は厳しい。そこで数学と英語では1年生から3年生の1月まで毎日1枚のプリントを課した。特徴は、状況に応じた内容を、数学は50分程度、英語20分程度で終わる量として毎日作成したことだ。
 生徒の大半は、部活動で帰宅が夜遅くなる。まとまった学習時間を確保するのは現実的に無理があり、自主的な予習や復習は望めなかった。そこで、プリントは朝でも昼休みでも取り組んで提出すればよいことにし、短時間でも机に向かう習慣を付けさせようとした。また、授業と家庭学習の連動を図るため、授業で取り上げた問題の類題やつまずいた問題の詳細な解説など、その日の授業に関連が深い内容とした。学校行事等で生徒に疲れが見えた時などは、課題を出さなかったという。
 「これさえやれば力が付くから、どんなに疲れていてもきちんと取り組むようにと、生徒には繰り返し伝えました。定期考査や模試でその成果を実感し、生徒は次第に楽しみながら取り組むようになりました」と、3年生担任の奥山浩之先生は話す。
 プリントには東北大など難関大の入試問題を織り交ぜた。その時点での学力で取り組める問題を選び、難関大は決して手の届かないものではないと実感させる。難度の高い問題の時には、裏面に解答・解説を載せ、それを見ながら解かせた。
 「東北大の入試問題は、1年生時から授業などでも取り上げました。入試問題はその力が付いてから解くのではなく、最初に見せることが大切だと思います。『これが解ければ合格できる』という具体的な目標になります」(柴田先生)

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