ベネッセ独自の調査・研究に基づく教育情報を発信。学校向け情報誌に掲載している教育動向や学校の実践事例、子どもや教育に関連したさまざまな調査の報告書、調査データなどを公開しています。
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2010年2月号
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私を育てたあの時代、あの出会い
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先輩教師の言葉
生徒の成長を
私自身が楽しんでいました
奈良県立桜井高校
賀来哲三
高取高校に赴任したのは開校2年目、目玉となる国際理解教育が本格的に始まる年でした。ただ、それが何を目指したものなのか、正直、私はよく分かっていませんでした。物理担当の私は、授業で彼らを教えることもない。国際型の担任としてどんなクラスをつくるのか、手探りの状態でした。私自身、新採の教師のような気分だったので、西浦先生に対しても「一緒に頑張ろう」という気持ちでした。
生徒との接点をつくろうと、英語の勉強会を放課後に開き、一緒に勉強しましたが、その教材づくりでも英語科の西浦先生に力を借りました。私が、「こんなものがあるといいなあ」と言うと、翌日にはつくってくれるんです。とても助かりました。進路の手引きも、皆で企画を考え、西浦先生がそれをうまく編集してくれました。
西浦先生とよく話したのは、「生徒は我々の想像を超える可能性を持っている」ということです。例えば、かつて私が勤めた学校で、運動部の主将を務めていた生徒が「先生、どこか自分に合う大学はないですか」と言う。彼の成績は学年でも下の方。「生き物が好き」という彼に、私は地方の私立大で微生物を研究している教授を紹介しました。その生徒は、素直な性格が研究に合ったのか、学問の面白さに目覚め、つい先日、ドイツの大学で博士号を取りました。現地では、東京大大学院出身の研究者と机を並べているというから痛快です。
こういう例は結構あるんです。これくらい生徒は変わるんです。進学校の生徒かどうかなんて関係ない。だから、固定観念にとらわれて、ただ難易度の高い大学に入れさえすればよいというのでは進路指導とはいえません。生徒を見て、「この生徒がこんなことをやったら面白い」と、教師自身も楽しまないと。
私も西浦先生も若かったあの頃、一人前の教師としての力量があったかどうかは怪しいものです。ただ、目の前の生徒を何とかしたいという覚悟だけは確かにありました。
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