特集 全入時代シフトで成功させる大学ブランディング

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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【大学事例 3】

学生の視点に立った改革プロジェクトで
全学を巻き込み愛校心を深める

近畿大学

近畿大学の「近未来プロジェクト」は、学生との関係を強化するために、若手職員が中心となって、改革を検討・実行する部署横断型の取り組みだ。一つひとつのプロジェクトを通して、ステークホルダー同士のコミュニケーションが深まり、目指す大学像が鮮明になるという。

新入生と保護者に歓迎のメッセージを伝える入学式に

 約1万人の新入生と保護者が少し緊張した面持ちで着席する中、突然、会場が真っ暗になった。花火が炸裂して大音響に包まれ、カクテルライトが入り乱れる。会場がパッと明るくなったかと思うと、吹奏楽部のドリル隊と応援部のチアリーダーが次々と舞台に現れ、音楽とダンスのパフォーマンスを繰り広げた。
 これは、近畿大学の2006年度入学式のひとコマだ。従来の大学の入学式のイメージとはかけ離れた派手な演出とパフォーマンスで、新入生と保護者の目をくぎ付けにした。入学式プロジェクトでリーダーを務めた研究助成課の中林大二課長補佐は、若者向けライブさながらの入学式にした背景を次のように話す。
 「入学式は大学と学生が初めて触れ合うイベントなのに、時間がたつと学生は内容をほとんど覚えていない。保護者が大勢集まる絶好の機会にも関わらず、大学の良さを伝える場として活用しきれていない。何事も最初が肝心と考え、大学に期待感を抱いてもらい、印象に残る式を目指した」
 大学への誇りと愛情を持って、充実した4年間を過ごしてもらえるよう、全力で支援していく。大学からのそんなメッセージを、最初のイベントで伝えようとしたのだ。しかし、従来のような粛々と進む入学式では、どんなに意味のあるメッセージでも、新入生の記憶にはなかなか残らない。そこで、派手な演出で度肝を抜き、目と心を引き付けたのだ。
 新入生と保護者へのメッセージを込めた演出は、会場に入るところから始まっていた。入口前の階段から中まで赤いカーペットを敷き詰め、受付は在学生とプロのスタッフによる応対で、歓迎の意を表した。司会には、近畿大学の卒業生で、関西のFMラジオ局で人気のDJを起用。卒業生が活躍する姿を見せた。
 式の最後には、ピンクの紙吹雪が降る中、「バルーンリレー」で会場を盛り上げた。会場の後方から巨大な風船を7つ落とし、自分の頭上に来たら前へと転がしてもらうというものだ。チアリーダーの介添で舞台の上に7つの風船がそろうと、「Welcome」という言葉が完成。新入生全員と在学生が力を合わせる最初の作業、という発想で取り入れた。
 こうしたパフォーマンスの一方で、建学の理念や大学の歴史、国際化教育、研究トピックスなどを紹介する映像を、大型スクリーンを使って上映した。学長の言葉、来賓の祝辞、在学生による歓迎メッセージなど、大学として伝えたいメッセージもきちんと盛り込んだ。
 単に派手な演出で印象付けようとしたのではなく、工夫された演出の一つひとつに新入生へのメッセージが込められていたのだ。

 

写真 写真
入学式の様子。在学生のパフォーマンス、プロの歌手による君が代独唱、学長の言葉、来賓の祝辞、大学の歴史のスライドショー、各部の代表者による校歌斉唱と、盛りだくさんだった

 

 

 

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