特集 全入時代シフトで成功させる大学ブランディング

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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【大学事例 4】

対話に基づく学生との信頼関係の上に
教育の質保証システムを築く

同志社大学

厳格な成績評価の実施に当たり、GPA制度を導入する大学が増えている。しかし、そこに、学生側の言い分を受け止め、コミュニケーションによる解決を図る制度を組み込む大学は、あまり多くない。同志社大学では「クレーム・コミッティ制度」を導入し、厳格な成績評価の実質化に努めている。

GPA導入と履修制度見直しがきっかけに

 授業を教員と学生との真剣勝負の場にする――。同志社大学がクレーム・コミッティの導入を検討し始めた時のスローガンだ。クレーム・コミッティとは、学生から授業内容や授業方法、成績評価に関するクレームを受け付け、調査・審議の上で解決に当たる組織。学生との対話を通して信頼感を築き、授業改善につなげたいという思いが、このスローガンに込められている。
 同志社大学では2002年から全学的な方針で、厳密な成績評価の実施を中心に教育改革を進めてきた。成績評価基準の明示、学生による授業評価、試験結果の公表など諸施策を実施し、教育に責任を持つ姿勢を強く打ち出した。  クレーム・コミッティもそうした改革の一環だ。導入の契機は、2004年度のGPA制度導入と履修制度の大幅な見直しだった。GPA制度ではグレード評価の評点が「4、3、2、1、0」と1点刻みで、従来の100点満点法と比べ、評価に対する異議が増える可能性がある。また、履修制度の変更で、開講1週目(いわゆる受講お試し期間)の後に受け付けていた科目登録をやめたため、授業の内容や方法へのクレームが増えると予想された。
 田端信廣副学長は「大学側が気付かないところで学生の不満がうっせきすると、両者の信頼関係が損なわれかねない。不満を制度の中で正面から受け止めることで、授業や教員に対する信頼感を高めることが、クレーム・コミッティの最大の目的」と述べる。
 クレーム・コミッティは学部単位の9つのほか、独立研究科、専門職大学院など、計15の組織がある。教務主任を中心とする3、4人の教員で構成される。これら個別の教学組織では対応できない全学的なクレームは、教務部長が委員長を務める全学クレーム・コミッティで取り扱う。クレームへの対応は、図1の手順で進められる。

図表

(1)学生が各学部・研究科の事務室にある申請書にクレームの内容を記入して提出する。
(2)各学部・研究科は2週間以内にクレーム・コミッティを開催し、事実関係を調査する。場合によっては、担当教員に事情を聞く。
(3)最初のクレーム・コミッティから2週間以内に対応を決定し、学生に文書で回答する。必要に応じて担当教員に改善を勧告する。
 取り扱うクレームは、授業内容や授業方法の改善、成績評価に関する質問や異議申し立てが中心だ。
 ただし、「どんなクレームでも審議の対象になるわけではない」と、教育開発センター所長の圓月(えんげつ)勝博教授は強調する。同志社大学では、2002年度から成績評価基準の記載方法を全学的に統一し、シラバスで公表している。クレームと認められるのは、(1)シラバスで約束した趣旨や内容と実際の授業が大きく異なる(2)試験内容が授業内容に対応していない(3)成績評価が基準に沿っていない――などの場合だ。シラバスを読まず「自分が想像していた授業とは違う」と訴えても、クレーム・コミッティで扱われる可能性は低い。


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