特集 志望校はこう選ばれている

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
  PAGE 30/35 前ページ 次ページ

【寄稿 より深く高校を知るために2】
中村学園大学 入試課課長 上森啓史

2wayコミュニケーションで顧客のニーズをつかみ信頼関係を築くための高校訪問を展開

◎中村学園大学は、高校訪問でのコミュニケーションを通じた情報収集と関係構築を重視している。キーワードは、「2way」と「クライアントニーズの具現化」だ。一般企業の営業出身という上森啓史入試課長に、不要論も聞かれる中での高校訪問の意義を論じてもらう。

エリアマーケティングで受験生の量と質を確保

 中村学園大学は、福岡市のほぼ中心部の城南区にある共学の大学だ。学園は創立52年で、大学にも41年の歴史がある。大学の規模は中と小の間くらいで、栄養科学部、人間発達学部、流通科学部の3学部を擁する。入学定員590人、3年次編入学定員50人、収容定員2460人、併設の短大は収容定員980人。大学・短大とも3割が福岡県以外からの入学生だ。
 九州地区は、18歳人口の減少率が全国平均に比べて高いにも関わらず、大学・短大進学率が低いという傾向にあり、さらに関東や関西の大学の進出が目覚ましい。このような厳しい環境の中、本学は志願者がほぼ右肩上がりの状況で(図1)、偏差値も上昇を続けている。2005年度に志願者が大きく伸びているのは、センター試験利用入試の導入によるものだ。高校側からの強い要望があり、学内で検討の上、導入に踏み切った。この経緯を高校に伝えたところ、一般入試の志願者も増えるという相乗効果を生みだした。後述する「クライアントニーズの具現化」のたまものだ。

図表

 受験生の量と質の安定的確保の原動力となっているのが、本学独自の「エリアマーケティングシステム」だ。これは、エリアごとに担当者を決め、高校に何度も足を運んでエリアの情報を集め、つぶさに分析することによって、広報戦術や媒体の展開を変えていく。例えば、A県では雑誌の浸透度が高いのでコミュニティ雑誌に広告を出す、B県ではローカルFMの浸透度が高いのでスポットCMを打つといった具合だ。エリアの特徴に合わせて戦力の投下を工夫することで、効果的な広報活動を行っている。
 入試課には、専任7人、臨時2人の計9人の職員がいる。うち5人が広報担当者で、年間延べ1200校ほどの高校を訪れる。地元・福岡を中心に、九州各県、沖縄、山口、広島西部、島根西部にも足を運ぶ。もちろん、高校によって訪問頻度に差をつけている。
 高校訪問の基本は、「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」ということだ。敵とは、志願者の動向、各高校の進路指導体制、各県の進学状況のことで、己とは自分の大学の強みと弱みである。これらを把握せずに高校を訪れても意味がない、といっても過言ではないだろう。


  PAGE 30/35 前ページ 次ページ
目次へもどる
大学・短大向けトップへ