高大連携においても女子との交流を深める。女子校での出張講義を積極的に行い、ナノテクやバイオなど最先端の研究を紹介。若い女性研究者を派遣し、女子学生のキャリアについても話してもらう。
　文部科学省のスーパーサイエンスハイスクール（ＳＳＨ）に指定されている宮城県第一女子高校とは、理系学部合同で本格的な高大連携事業を推進。同校の理数科の生徒が大学で実験をしたり、放課後に大学の授業を受けたりしている。この結果、同校の理系志望率は年々上昇している。
　東北大学が女子のキャリア支援に力を入れる背景には、女性に積極的に門戸を開いてきた伝統がある。1913年、日本の大学として初めて理学部に女子学生を受け入れた。2001年には全学的組織として男女共同参画委員会が発足し、男女格差の是正や研究・労働環境の改善、各種支援体制の充実を図っている。
　2006年には、文部科学省の科学技術振興調整費「女性研究者支援モデル育成」に採択され、「育児・介護支援」「環境整備」「次世代育成」の３プログラムを推進中だ。特に「サイエンス・エンジェル制度」は、女性研究者養成の施策として注目を集める。女子学生や研究者が母校への出張セミナーに赴いたり、サイエンス・カフェや女性研究者フォーラムに積極的に参加したりして、ロールモデルとなることを目指す。
　「女子を工学部に引きつける一番良い方法は、理系分野の最前線で活躍する女性の姿を示すことだ。こうした取り組みを通して、後に続く女性が増えればうれしい。５年、10年はかかるかもしれないが、地道に続けていきたい」（中橋教授）
　工学の面白さと社会とのつながりを伝え、女子にはキャリアパスのイメージを鮮明にさせる。東北大学工学部のユニークな試みの今後に注目したい。