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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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【CUSTOMERの視点】全国高校生調査に見る女子の進路選択要因

進路指導との連携による「出口」の明示に
進学ニーズ掘り起こしの可能性

日本学術振興会特別研究員 林未央

◎全入時代が近づく今、顧客である高校生の中の「大学に進学しない」という選択をする層について分析することは、マーケティング上の重要な示唆をもたらす。ジェンダーの視点から社会学を研究する林未央氏は、地域や家庭の経済状況と女子の進路選択の関係を、調査に基づいて分析した。大学への提言と併せ、寄稿してもらった。

過去最高の進学率でも、「全入」はまだ来ていない

 大学・短大の志願者総数と入学定員が同じになる「大学全入時代」が、目前に迫っている。希望者は誰でも進学できるようになるわけだが、それはあくまで数字の上での話である。
 2006年度、高校卒業者に占める大学進学者の割合は41.8%、短大進学者を合わせると49.3%で、過去最高を記録した。だが、この数字の裏には、性別や地域による違いが潜んでいる。希望しても進学できない層や、進学することなど思いもよらない層が、まだまだいるのである。
 そこにこそ、各大学がマーケティング戦略の方向性を探る一つの鍵が潜んでいるといえるだろう。本稿では、東京大学大学経営・政策研究センターが実施した「高校生の進路についての調査」(以下、高校生調査)の結果をヒントにしながら、潜在的な進学需要の掘り起こしを視野に入れた学生募集の工夫について考える。
 高校生調査は、2005年11月に全国の高校3年生4000人を対象として行われた。「エリア・クォータサンプリング」という手法を用いて、全国からサンプルを集めた。在籍高校を介した調査ではなかなか尋ねることのできない家庭の経済状況にも焦点をあてた点に、特徴がある。2006年3月には決定進路についての追跡調査を実施。現在、高校卒業後1年目の状況を尋ねる第2次追跡調査が進行中である。
 以下、特に断りがないデータは、すべて高校生調査の結果に基づく。


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