こうして、女子の進学機会の制約や進学需要の地域差に目を向けると、今後の大学における学生募集の工夫の可能性が２つ見えてくる。
　一つは、大学独自の奨学金の導入をはじめ、多様な経済支援を模索することである。現在も、成績優秀者の学費免除など、各大学の様々な取り組みがある。しかし、そうした制度を知り、応募できるのは、多くの場合、入学後のことである。出願と同時に学費免除や奨学金の申し込みができるようになれば、進学に関わる希望と費用の問題を受験生が調整でき、選択肢が広がるはずだ。経済的困難を抱えた者にも開かれた大学の在り方として、考えてみてもよいのではないか。
　もう一つは、将来の仕事とカリキュラムとの関連性を、受験生により分かりやすく示すことである。もちろん、職業直結型の教育にシフトすることだけが、大学にとっての最適解とはいえない。また、各大学の努力ということでいえば、キャリア教育などによって、自大学の教育が就職やその後のキャリア形成に役立つことを、様々な形でアピールするようになっている。
　しかし、そうしたジレンマの中で大学に工夫の可能性があるとすれば、受験時からかなり明確な職業志向を持ち、それによって進路を決める受験生に対して、いかに自大学の魅力を理解してもらうかという点ではないだろうか。入学させてから初めてキャリア形成を支援するというよりも、キャリア形成に目を向けながら進路を選択しようとしている時点でいかにアピールできるかが、鍵のように思われる。
　エリア（4）の中で、少数派である大学進学女子は、進路選択の際、進路指導の教員に影響を受けたと答える割合が、他のエリアよりも高かった。高校とうまく連携しながら大学の取り組みを受験生に的確に伝える方法を、今以上に追求すべきだろう。
　今回の報告では、高校生の進路選択の実態に関わるごく一部を示したに過ぎない。大学にとっての顧客である高校生を様々な視点から分析し理解することは、大学の在り方を捉え直し、戦略を模索する上で有用な示唆をもたらしてくれるはずだ。