特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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主体的に学ぶための基礎となる「3Rs」

 主体的な学びを支える基礎的なスキルとして耳塚教授は3Rs(読み・書き・初歩的な統計などの計算)の習得を挙げ、大学で学ぶために不可欠なものと位置付ける。
 「本来は高校で身に付けておくべきものだが、必ずしも全員が身に付けて大学生になっているわけではない。今に比べれば、昔の高校生の方が3Rsを身に付けていたと思う。この変化を高校の教育現場はもちろん大学も認識し、対策を考えなければならないだろう」(耳塚教授)
 耳塚教授は、高大連携によって主体的に学ぶ生徒・学生を育てようとしているお茶の水女子大学の取り組みを例に挙げる。同大学では、2008年度入試から、お茶の水女子大学付属高校を対象とした高大連携特別教育プログラムを始める。これは、大学と高校が協力して選択科目を同付属高校に設け、同大学への入学希望者に履修させ、その科目の成績、通常の教科の成績などの総合評価を合否判定の基準にするという指定校推薦制度だ。大学の教員が高校に出向いて指導する。3Rsの習得、主体的に学ぶための動機付けを、高校の段階で行おうとするものだ。このように、大学の学びを意識した教育を高校で行うことが、主体的な学びを促すことにつながるかもしれない。
 「始めたばかりでどのような成果が得られるかは分からないが、このプログラムでは、大学が求める人物像を高校に直接発信できるというメリットがある。高校と大学にはそれぞれに使命があり、各々が課題を解決する必要があると思うが、この制度は1つの新しい試みとして考えられるだろう」(耳塚教授)

*3Rs:Reading,Writing,Arithmeticの各単語の「r」を取ったもの

大学の理念を伝え、学生の意識を変化させる

 大学教育は今、変化が著しい高校生・大学生への対応が求められているが、大学の求める学生を育成するには、学生に「理念を伝える」ことも大切ではないかと、耳塚教授は言う。
 「書店に行って『難しい本がたくさんある』と感じるようでは、大学卒業程度の学力を身に付けているとは言い難い。高校生の変化に対応することも必要だが、『大学での学びとは何か』という大学としての教育理念を学生に伝えることも大事だと思う」
 大学としての理念が学生に伝われば、おのずと学生の意識も変わってくるだろう。大学生になったら「生徒」ではなく「学生」であるということを意識させることが、大学での「主体的な学び」への適応を促すことになるのではないだろうか。


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