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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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インタビュー●高校から大学への「移行」と「適応」

中等教育からの「円滑な移行」こそが
初年次教育の最も重要なテーマ

関西国際大学 濱名篤学長

高校までの教育と大学における教育をつなぐ初年次教育では
学生をできるだけ早く大学になじませること、すなわち
早い段階での大学への「適応」こそが重要だと、関西国際大学の濱名篤学長は語る。
初年次教育の意義や、実際の教育実践について聞いた。

大学のユニバーサル化で移行問題が表面化

 高校と大学では、教育システムや学習スタイルなどが大きく異なる。この不連続問題は古くから存在していたが、現在、日本の大学の教育現場ではこれを解決することが大きな課題になっている。関西国際大学の濱名篤学長は、その背景を次のように話す。
 「要因の1つに、大学進学率の上昇が挙げられる。大学がユニバーサル化し、高校生の過半数が大学に進学する時代になった。自分の力で大学の学習や生活に適応することができない学生も入学するようになり、従来の大学教育が成り立ちにくくなっている。そのため、高校と大学の不連続性が大きくクローズアップされるようになった」
 いつ頃から、どのような形で、こうした問題が表面化してきたのか。濱名学長は次のように言う。
 「高校と大学の不連続性は、少子化に伴う18歳人口の減少期に、既に多くの大学関係者が実感していた。志願者数が減少したために、多くの大学は入試形態を多様化させ、様々なタイプの学生を入学させることで学生数の確保を図った。その後、学生の多様化も進み、大学の教育についていけない学生が増えてきた。この問題は、当初、学力低下として捉えられていた。しかし、実は単なる学力低下にとどまらず、それ以前の問題である学習意欲の低下や基本的な学習習慣の欠如が進んでいることも明らかになった。さらに、先進国や成熟した社会に共通する傾向だと思うが、豊かになった保護者が、過保護、過干渉になり、子どもの自立を妨げるケースが増えている。一方、子どもはパーソナルな世界に閉じこもりがち。こうした状況が、大学という新しい世界への移行を難しくしている。これらの問題を踏まえ、ようやく高大間に横たわる不連続性が移行問題として認識されるようになった」
 進学率上昇に伴う高大間の移行問題は、学力面だけにとどまらない。現代の若者は、対人関係に非常にセンシティブで、行動範囲が狭く、新しい環境に適応しにくいことが指摘されている。その上、日本の大学ならではの事情も絡む。
 「最近は、学群などの大きなくくりで学生を募集する大学も出てきたが、多くの大学は学科ごとに募集している。しかも、偏差値を基準とした一元的な尺度による高校の進路指導で方向性が限定されてしまうことが多く、大学でミスマッチが起こると、入学後に学部・学科変更などの修正がしづらい。こうした日本の大学の制度上の問題も無視できない」(濱名学長)


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