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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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「適応」は入学後半年で決まる 早ければ早いほどよい

 高校から大学への「移行」で重要となる「適応」に関して、濱名学長たちの研究グループは、大都市の国私立5大学の文系学部在学生を対象に、1年次から3年次に至るまでの経年変化を調査した
 「高校生活と比べ、大学1年次の生活がうまくいっている場合は『適応』、うまくいっていない場合は『不適応』と回答してもらった結果を見ると、1年次の6〜10月にかけて、対人関係と生活全般では大きな変化が見られないが、学習面では適応者が増加している(図1)。つまり、学習面でうまくいっていると思う学生は増加傾向にある、といえる」

*「高校から大学への移行と適応過程に関する調査2004〜2006年度」研究代表者:濱名篤、科学研究費基盤研究B(1)

図表

 また、適応状態が持続している学生を「適応持続」、不適応状態が続いている学生を「不適応継続」とし、適応と不適応の状況変化を見てみる(図2)。適応持続の学生は、対人関係と生活全般では半数を超えているが、学習面では3分の1強しかいない。さらに、学習面の不適応継続が約3分の1存在することに加え、「上昇」が24%、「下降」が9%と、この時期の学生は学習面に関して非常に不安定な状態にあるといえよう。

図表

 一方、「適応」「不適応」において、高校の成績、居住形態、入試形態、性別等での有意差は見られなかった。
 「これは、どのような背景の学生にも不適応が起こりうる可能性があることを示している。これらの結果から、社会面においては、初年次の適応に持続性があることが分かり、早い段階での効果のある支援によってこの適応を促すことができるといえよう」と濱名学長は分析する。
 「私個人としては、最初の2カ月が勝負と考える。4月の段階で『入学してよかった』『大学生活への期待』などの肯定的な感情を喚起するよう、まず対人関係づくりを手厚くサポートし、それに伴い学習面の適応を促すことが重要なポイントだ」


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