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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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初年次教育に必要な哲学とペダゴジー

 初年次教育の内容は、3つに大別できる(図3)。

図表

 「まずは、大学での学習スタイルや対人関係等を含めた大学生活への『適応』を促すことだ。各大学にはそれぞれのミッションと校風があり、入学した大学自体への適応も含まれる。次に、大学での学びに必要な具体的なスキルを学ばせることが必要だ。このスキルには単なる読み書き能力だけでなく、調査方法の習得や批判的思考力の醸成、タイムマネジメントなども含まれる。ライフプランやキャリアプランづくりは、自己分析や学習目標・学習動機の獲得とも密接に結び付いている。これらに専門領域への導入を加えれば、1980年代以降アメリカなどで発達し、世界各国に広まった初年次教育の内容とほぼ一致するといえる」
 標準的な初年次教育のモデルはあるのだろうか。
 「一般に、新しい教育システムが提唱されると、まずはそのコンテンツを中心に考えがちだが、初年次教育においては、コンテンツをすべての大学向けに標準化できるものではないという点に、注意が必要だ。初年次教育の内容は、その大学が置かれた状況と必要性に応じて決まるからだ。初年次教育の鍵はコンテンツにあるのではなく、“大学を全く知らずに入学する1年生に対して、大学や学部レベルで組織的に、大学生活と大学での学習に円滑に移行させ、成功への道筋をつける”という哲学と、独自のペダゴジー(教育方法)にある」
 濱名学長によれば、初年次教育では、チームで協力しながら学んでいく「グループ学習」を含め、体験を通して学生を能動的に学習させる「アクティブラーニング」が重視される傾向にある。こうした教育手法をベースにした教育の在り方が、初年次教育では効果的だと言う。


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