特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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ESDを旗印に教育目標を特色化

 ESDに取り組む背景には、環境教育の深化だけではなく、岩手大学を象徴する「旗印」にしたいという意図もある。1991年の大学設置基準の大綱化以降、多くの大学は教員が持ち回りで教養教育に携わる体制に移行した。教員の関心は専門教育と学内の組織再編に集まり、教養教育の機能は低下していった。その反省から、多くの大学が教養教育の在り方について議論を重ね、再構築を模索してきた。しかし、「教養とは何か」という根本的な問題を解決することができないまま、袋小路に入り込むケースが多く見られた。
 「教養教育の再構築には、教養教育の目標を教員全員で共有化することが必要だ。その点、ESDは世界各国が共通に取り組むキャンペーンであり、日本の働きかけで国連が提唱したもので、教員の理解を得やすい。ESDを旗印とすることで、教員の意識を一つにできると考えた」(玉副学長)
 同時に、ESDは世界に通用する教育を確立するための布石でもある。玉副学長は、「大学間の競争が激化し、大学には特色が求められるようになった。一方、社会のグローバル化に伴い、国際的通用性も強く求められている。『ユニバーシティ』を名乗る以上、世界に通用する教育をしているのかということを教員全員が強く意識しなければならない。大学全体でESDという世界レベルの課題に取り組むことが、その一歩になる」と強調する。教養教育の在り方だけでなく、大学の存在意義とは何かという根元的な問いに対する一つの解答が、岩手大学にとってのESDだったのである。


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