成功裏に見える愛媛大学の英語教育は、常に改善が重ねられている結果といえる。スピーキングとリスニングの強化に焦点を当てた第１期。その反動でリーディング力の伸びがそれほど見られないとの指摘を受け、リーディングとライティングの活動も盛り込んだ統合型の統一テキストに切り替えた第２期。そして、４技能の基礎を１年次に集中的に身に付けさせる新カリキュラムに変更した2007年度からの第３期、と常に改革を続けている。
　習熟度別授業も始めた。これまでのクラス分けは学籍番号順で、学生の英語能力は一切考慮していなかったが、上位層にはさらに伸びる指導が必要である一方、もっと手をかける必要のある学生もいるという考えから、2007年度から（株）ベネッセコーポレーションが開発した「ＧＴＥＣ ｆｏｒ ＳＴＵＤＥＮＴＳ＊１」を１年生全員に受けさせ、その結果によってクラスを分けている。同時に、ＧＴＥＣ ｆｏｒ ＳＴＵＤＥＮＴＳの結果を授業成績評価の一部に組み込むことで、より客観的で妥当性のある成績評価の実現を目指している。
　しかし、外部テストを導入すると、授業がテスト対策に偏る危険性がある。愛媛大学では、必修の授業ではテスト対策を行わず、あくまでも授業の到達度を測るテストと組み合わせることで、より客観的な英語能力を測ろうとしている。もっとも、学生の英語能力の評価は難しく、外部テストのスコアだけでは測れない面もある。各種テストの相関も含め、学生の成績評価は大きな課題だ。
　２年次以降の授業の在り方も、今後の課題として挙げられる。現在、英語教育は１年次の必修科目として集中的に行われているが、２年次以上になると「英語Ｓ」（２単位）という選択科目の少人数授業が開講されているだけだ。「英語Ｓ」の内容は、ＴＯＥＩＣ／ＴＯＥＦＬ対策、多読、ディベート、中級ライティング、Travel Englishなど多彩だが、選択制の授業であり、各々が体系的に積み上げられたプログラムになっていない。折本教授は、「２年次以降も英語を継続的に学びたいという学生のために特別必修コースなどの設置も考えている。将来的には、プログラムを系統立て、『英語副専攻』のような形のカリキュラム導入も検討していきたい」と抱負を語る。
　このほか、大学院生へのプログラム提供、学部教育との連携、全学規模で策定が進む「グラデュエーションポリシー＊２」に対する４年間の英語教育の位置付けなど、今後も同センターに求められることは多い。
　「改革の成功には大きな変化が必要と考え、最初は極端な方向に振り、その後、バランスが取れるように修正してきた。今後も多方面と調整しながら、全学体制で英語教育の改革を推し進めていきたい」（折本教授）