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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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学部横断型のチームで多角的な分析が可能に

 このプロジェクトは、2007年度後期に週2回、全13週で行う(図1)。
 第9週までは「フェーズ1」として、それぞれの企業を担当するグループを各学部のゼミの中に作り、調査や分析を進める。その際には、学部の特性を存分に生かすことが重視される。例えば、経済学部の学生は企業へのヒアリングなどを通し、事業内容や人事管理システムの把握に努める。人文学部の学生は言説分析の理論などを用い、今のウェブサイトは企業の伝えたいことを十分に伝えられているか、といった表現面を中心にチェックする。社会学部の学生は、アンケートやインタビューを行い、企業からのメッセージに対して学生がどのような印象を受けるか、といった調査を進める

図表

  第10週から最終週までの「フェーズ2」では、学部横断型の混成チームをつくり、それぞれが担当する企業の課題にアプローチする。この段階が、プロジェクトの最大の特徴といえる。
 「実社会では様々な部署の協働により仕事が進められる。このプロジェクトでも、学部の異なる学生がそれぞれの専門性を生かして1つの課題に取り組む」と、福間専任講師は説明する。
 同大学では、これまでに学部横断型のゼミを行ったことはなく、「どのような効果が得られるか」「学生に受け入れられるのか」といった懸念があった。そこで、事前に人文学部と経済学部の合同ゼミを実施した。内容は、コピーライターを招いて、ハンドクリームのネーミングなどを考案するというものだ。
 人文学部の学生からは語感や語呂合わせ、経済学部の学生からは売れ行きや業界内でのポジションなどに重点を置いた発言が目立ち、ディスカッションは活発に進んだ。ゼミ後のアンケートでは、「他学部の考えに触れられる合同ゼミは、私たちが社会に出たときに大きな力になると思う」「他学部の人と話すうちに、自分とは違う考え方や答えが出てきて、新しい考え方が身に付くと思った」という好意的な意見が大半を占めた。「今後も合同ゼミがあれば参加したいか」という問いには、ほぼ全員が参加を希望した。
 合同ゼミについて、福間専任講師は、次のように話す。
 「サークルでも他学部の学生との交流があるが、相手が何を学び、どんな能力を持ち、どのような考え方をするかまではほとんど分からない。合同ゼミでは、共同で課題に取り組むことで互いを刺激し合い、幅広い知識の修得につながる。さらに、普段は専門分野を強く意識することのなかった学生にとって、自分が何を学んでいるのかを強く意識するきっかけになり、大学内に根強く存在する学部間の垣根を低くすることにつながる」


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