企画1

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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教職員の英知を結集し教育方法を適宜再構築

 大学院教育の目標である「高度な専門的職業人・研究者」は比較的イメージしやすいが、学士課程教育の目標である「バランスの取れた高度な教養人・市民」を定義するのは難しい。この課題に応えるため、ハーバード大学が1980年代初めにコミュニケーション能力、プレゼンテーション能力、論理的思考力、社会的自己認識を基本要素とし、英語、数学、歴史をコア科目として位置付けたことを記憶している。
 本学の場合、これに建学の精神である仏教が加わるだろう。ただ、この課題に対する正解は、どの社会どの時点においても一義的には決まらない。重要なのは「バランスの取れた高度な教養人・市民」とはどのようなものかを常に検討し、実現に向けて最も妥当と思われる方法を適宜取り入れることだ。このプロセスは教職員の英知を結集して形成すべきもので、当センターの最も基本的な役割がここにある。
 学生の質は急激に変化している。それを前提として「バランスの取れた高度な教養人・市民」の育成を目標とした教育をどう再構築するか、初期教育の在り方、リメディアル教育と基礎教育の在り方などは火急の課題だ。
 教育の在り方を変える試みとしてはインターンシップやフィールドワークが導入されている。伝統的教育とは異なり、教育を現実社会の現場に直結させるものだ。伝統的教育が学習した理論に基づいて現実社会を理解するという演繹(えんえき)的教育であるのに対し、新しい試みは現実社会での体験・経験に基づいて理論化を図るという帰納的教育である。この教育の展開は、演繹的教育から帰納的教育への転換と言える。
 教育プログラムの構築に際して考慮すべき要素は、(1)知識(Knowledge)、(2)技術(Skills)、(3)姿勢・態度(Attitude)、である。日本の大学教育では、「K(知識)」と「S(技術)」が重視されてきた。KとSに関する教育の蓄積には多大なものがあるが、「A(姿勢・態度)」に関しては非常に乏しい。現実社会と直接連携させる教育プログラムでは、Aを通してすでに修得したKとSの妥当性を検証すると同時に、新たなKとSを獲得するという教育効果が期待される。
 当センターが、このような教育改革を推し進める教職員の基盤として機能し、より社会的妥当性を持った教育を展開していくことを願ってやまない。


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