企画2

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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フィールドワークを重視し地域との関わりを持つ

 学生はどのようにして公益の精神をはぐくみ、まちづくりや大学づくりに貢献しているのだろうか。東北公益文科大学での「学び」と学生の「課外活動」の2点から見てみる。
 同大学は、公益学部公益学科のみの単科大学であり、経営系、社会系、環境系の3つの系がある(図1)。いずれも、「公益」の観点からアプローチしていくのが特長で、学生は2年次にいずれかの系に進む。1年次必修科目として公益に関する基礎を学ぶ「公益概論」も設置している。

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図1

 「商業都市として発展してきた酒田市では、昔から地域のリーダーだった地主や経営者が私財を投じてまちをつくってきた。海岸全体を覆う防砂林など、市内には多くの先人が残した“公益の跡”が今もあり、公益の精神を学ぶ宝庫と言える」(大歳教授)
 こうした地域の財産を学びに生かそうと、授業ではフィールドワークを重視している。例えば、大歳教授の授業では、庄内地域の環境を学ぶため、最上川流域で水質調査を行い、汚染を防ぐための解決策を研究している。
 1・2年次には必修科目の基礎演習として「公益自由研究」があり、地域の身近な問題をテーマとしてフィールドワークを行う。ある授業では、山形県唯一の離島・飛島(とびしま)に漂着するゴミ問題に取り組んでいる。学生は、モニタリング調査や海岸の清掃を通して、地域の自然の豊かさや大切さ、そして環境問題を肌で感じる。この研究によって飛島の環境に興味を持った学生は、その後、ゼミや課外活動を通して継続的に飛島に関わり、島民と一緒に漂着ゴミ問題の解決や島おこしに深く携わっていくことも少なくない。まさに「地域全体がキャンパス」だ。
 このように、「学び」を通して地域との協働を図っている同大学だが、キャンパスが最上川を挟んで市街地の対岸にあり、商業地域とはなかなか連携しにくいという課題があった。そこで、商店街の空き店舗を改装し、山形県、酒田市、酒田商工会議所と共同で「さかた街なかキャンパス」を開設して、学生と市民の交流の場として活用することにした。今では同キャンパスが商店街の活性化の拠点になっている。ここで行われる卒業論文発表会に市民が自由に参加できるなど、大学がまちに溶けこんでいる。


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