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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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出張講義の実態とその改善策

 大学教員による出張講義の実態をいろいろと調べてみると、高大連携が目指すべき目的とかけ離れているものが散見された。特に、業者任せの出張講義では、なぜそのような講義をするのかという必然性があいまいで、日常の授業との文脈とは無関係に、イベント的・請負的に講義が組まれている例がほとんどであった。また、「講義内容については大学にお任せ」という傾向があり、教員同士の事前・事後の打ち合わせもなく、日頃の授業を担当している高校教員の頭越しに大学教員が高校生を指導するケースが多かった。そのため、こうした出張講義では、高校と大学の教員同士の交流にはなかなかつながりにくい。
 出張講義の在り方とその改善策について、高校と大学だけでなく、出張講義の請負業者も一緒になって知恵を出し合う必要がある。そして、お互いが少しずつ努力することによって、より良いものに育てていきたい。
 例えば筆者の場合、高校に出張講義に行く際には、必ず事前に高校の教科担当の教員と連絡を取り合い、講義の目的や内容について打ち合わせるようにしている。時には、高校教員とペアを組んで本番の授業を展開することもある。
 京都府立洛西高校は、業者に依頼してイベント的に出張講義を開催している高校であるが、事前に大学教員から講義の内容を聞き、生徒に対する事前指導に生かしている。講義終了後には生徒が司会をして講師との質疑応答や交流する時間(30分間)を設け、後日生徒の感想文は講師に届けられる。
 こうした工夫によって、生徒は問題意識を持って授業に参加し、講義内容だけでなく、講師の生き方からも多くの示唆を得ている。講師側も、生徒からのフィードバックを通して授業改善のためのヒントと元気を得ている。さらに、高校と大学との事前の情報交換は、教員同士の交流のきっかけにもなっている。
 以上のような工夫と努力は、表2前ページ)に挙げられているスーパーサイエンスハイスクール(SSH)のような「特別な高校」でなくても十分に可能であろう。


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