特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
  PAGE 15/34 前ページ 次ページ

大学生との合同授業で大学での学び方を体得

 大学での講義の受講も一貫教育の重要な柱の一つである。1年次の夏休み期間中に大学で「情報活用リテラシー」の集中講義を受講し、情報活用力、資料検索力といった、大学での学びの基本的なスキルを修得する。2・3年次には週1回、大学にバスで通い、大学生と一緒に、一貫教育の柱として特に重視されている「人間学入門」「人間学概論T〜V」を受講する。これらは、人間学部への橋渡しとなる科目で、併せてノートの取り方、講義の聞き方、試験前の心構えなども伝える初年次教育の役割も果たす。
 「大学の講義の方法は、高校時代とは大きく異なる。国際クラスの生徒には、大学入学前から必要な心構えやスキルを身に付け、入学後の大学での学びにつなげてもらいたい」(伊藤教授)
 大学生と高校生が混合でグループワークに取り組む授業もある。高校生がまとめ役になることもあり、大学生と比べても遜色(そんしょく)なく作業できる上、試験では大学生より平均点が高い場合もある。
 「最初は、大学生と一緒ということで違和感を感じたり、90分授業に戸惑ったりする高校生もいたが、回を重ねるうちに違和感なく溶け込むようになっていった。大学生にとっても高校生の存在は良い刺激になっているようだ」と伊藤教授は話す。

写真
写真1:名城大学附属高校国際クラス2年生は、名城大学で大学1・2年生と一緒に全学共通教育部門の科目の「心の科学」を履修する

課題研究で探究活動の基礎を身に付ける

 名城大学人間学部と同大学附属高校国際クラスの7カ年一貫教育の最大の特徴は、筆記や面接による試験なしで進学できる点にある。伊藤教授は「受験勉強を必ずしも否定しないが、ゆとりのある学習を通して人間的に成長してほしいという思いから、人間学部への進学は基本的に書類審査のみとした」とそのねらいを説明する。
 試験を課さないことで、高校生の学習意欲を維持することに不安はなかったのだろうか。
 同大学附属高校の鈴木勇治教頭は「国際クラスを新設する際、『何らかのハードルがないと、生徒の学習意欲が希薄になるのではないか』と懸念を示す教員がいた。高大一貫教育をうたっている以上、試験を課すことはできないが、大学進学に向けて何かしらのハードルを設けることで、生徒の気を引き締める必要は感じた」と話す。
 そこで、国際クラス3年次の最後に設定したのが「課題研究」である。大学の卒業論文に当たるもので、高校生自ら研究テーマを選んで探究活動を行い、8000字の小論文にまとめる。
 課題研究では、人間学部の教員が高校生の指導の一端を担う。テーマ設定をアドバイスしたり、資料の収集や分析、論文の作成方法を教えたりする。また、最後の発表会では、優秀論文の講評も行う。小論文の出来によって入学の合否が左右されるわけではないが、論文を仕上げるという目標設定により、少なからず高校生の緊張感を高めることができるという。
 高大接続の観点からも課題研究は重要な意味を持つ。同大学人間学部には、1年次に大学での学び方を学ぶ「アカデミック・スキルズ」が設けられている。ゼミ形式でパソコンや図書館の使い方などを学び、大学で探究活動を行うための基本的なスキルを身に付ける科目である。この授業の中で課題研究の成果を見ることができる。
 「国際クラス出身以外の学生の多くにとっては初めて学ぶことばかりなので、教員が指示を出した時にすぐに動ける学生は少ない。しかし、国際クラス出身の学生は、高校の『課題研究』でテーマ設定から、資料検索、論文の仕上げに至るまでのプロセスを一通り学んでいるため、細かい指示を出さなくても主体的に動ける。単に手がかからないだけでなく、他学生の模範にもなる」と伊藤教授は評価する。
 同大学附属高校出身者の中には、ほかの受講生に率先してアドバイスをし、他学生を引っ張っている学生もいるという。「付属高校生を学部のコアにする」という当初のねらいは、実現しつつある。


  PAGE 15/34 前ページ 次ページ
目次へもどる
大学・短大向けトップへ