石巻商業高校との協定の柱は、同高校の生徒が石巻専修大学の科目等履修生として、経営学部が開講する既存の授業を、半年間または１年間にわたって受講するというもの。修了時に試験に合格すれば高校の履修単位として認められ、同大学入学後、大学の単位としても認定される。2007年度の開講科目は前期と後期合わせて８科目。高校生が理解できる講義形式の科目を中心に、高校生にとって放課後となる大学の５時限目に設定された。
　実は、最も難航したのはこの８科目を決めることだった。当初、高校側が生徒に受けさせたい科目と大学側が用意できる科目の間に隔たりがあったからである。経営学部の関根慎吾准教授は、開講科目決定の過程を次のように説明する。
　「高校は学校の学習内容に関連する経営学部の科目を希望し、本学もその考えには賛成した。しかし、高校生が理解できるような専門科目となると、大学１年生が履修する専門の必修科目に制限される。また、高校生が大学に来ることができる16時以降に必修科目を設定すると、ほかの専門科目との兼ね合いから、今度は本学の学生のカリキュラムに支障が生じる。本事業に対する高校側と大学側、双方のねらいに合致した科目を決めるために話し合いが重ねられた」
　高校と大学の各代表から成る「高大接続研究事業準備委員会」において、2006年７月から約３カ月かけて詳細を決める協議が行われた。
　「石巻商業高校は本学から徒歩15分ほどの場所にある。同高校とは以前から出張講義、部活動における生徒と学生の交流、施設設備の貸し借りなどで連携してきた。管理職だけでなく現場の教職員同士も顔見知りで、そうして培ってきた信頼関係がスムーズな話し合いにつながった」と、経営学部長の三好幸治教授は話す。

　最終的には、大学での選択必修に当たる科目を対象に、経営学部の４コースから前・後期各１科目の計８科目を、原則として月・火・水・金曜日に振り分けた。高校生の選択の幅を保証しつつ、大学も経営学部の各コースの概要を伝えられるようにした。
　一方、東松島高校との協定の柱は、同高校を会場として石巻専修大学が提供する授業を高校生が半年間にわたって受講し、試験に合格すれば、高校だけでなく大学入学後に大学の履修単位として認められるというものである。
　同高校は2005年度に単位制高校として開校した。４年制大学への進学希望者が少なく、進路意識を高める進路学習の一環として、大学との連携を模索していた。地理的に同大学から遠いというハンディはあったが、単位制高校は全日制高校よりも大学の科目を単位として組み込みやすいため、大学の開講科目でありながら授業を行う場所を高校にすることによって連携が実現した。開講科目は「学問への誘い」をテーマとする複数の教員によるオムニバス形式で、大学での勉強の楽しさや各分野の最先端の動向などを伝える授業である。専門性の強い科目が多い石巻商業高校と大きく異なるのは、進路意識の向上という高校側のねらいを反映させたためである。