2007年度には、教員の授業に対する取り組みや工夫を共有することを目的として、非常勤を含めた全教員を対象とした「『よりよい授業を行うための取組』に関するアンケート」を実施した。「理想の授業、めざしている授業」「授業で心掛けていること」「学生に対して心掛けていること」「授業運営上の悩み」などについて、自由記述方式で回答してもらうというものだ。回収率は専任教員、非常勤教員合わせて28％で、約500件の回答を集計した。
　「自由記述では集計が煩雑になるが、生の声を聞くことがＦＤの改善につながると考えた」と濱本氏は説明する。
　教員の回答は、すべての教職員が閲覧できるよう１冊の冊子にまとめられた。ＦＤプロジェクトチームでは、回答の詳細な分析を行い、課題や改善点によって分類した。そこで明らかになった課題の一つは、教育インフラに対する要望である。
　いくら教員が万全の準備をしても、環境・施設・設備等が不適切であれば理想の授業は実現できない。大学の教育力を向上させるためには、間接的な教育支援を担っている職員の役割がますます期待されていることが浮き彫りになった。
　授業については、学問領域、配置年次や１クラスの人数など、状況によって内容や方法が大きく異なることも改めて確認できた。
　「ＦＤ活動については、学問・研究領域の違いをふまえて、ある程度の自由度が必要。教員一人ひとりの経験を通して蓄積されたノウハウを共有するとともに、それぞれの長所を伸ばすことで、理想の授業を追求してもらうことが大切だ。一律な取り組みを押しつけ過ぎて長所を損なわないよう、留意する必要がある」と濱本氏は話す。