特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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3領域の改革における具体的な職能開発推進策

 有効な職能開発のためには、何をすればよいのか。業務、事務組織、職員人事制度の3領域で、職員組織自らの責任で決定できるようにすることだと考えている。決定の過程では、教学側と意見の擦り合わせをしたり、理事会に最終決定を委ねたりすることもあろうが、これらの実質的な決定権を職員に委ねることによって、職員の責任意識も大学全体を見る視野も育つこととなろう。
 業務改革では、合理的な仕事の仕組みに変えていくこと(カイゼン)から、目標を持った仕事のやり方を導入して「成果」を挙げる仕組みをつくり上げることまで、実際の成功事例・失敗事例を披歴し合いながら自分たちで考えさせるようにすることである。
 先述した教育改革の中で職員がフィールドワーク・ファシリテータを務めなければならないことであるとか、単に実務の正確さ(これも重要である)だけを追求するのではなく、新たな業務の開発についても議論できるであろう。その際に忘れてはならないのは、大学のミッションやビジョンに基づき、学生の実態をふまえた上で、業務をどのように改革していくかということを基本に据えておくことである。
 事務組織改革では、他大学と同じような部や課を置くだけではなく、その大学のビジョン実現のための最適な組織形態に随時変えていけばよい。これも、事務局幹部で検討するのは当然としても、職員集団の中で議論し、決定していけばよい。また、ともすれば「タコツボ化」しやすい縦割り組織の弊害を克服するために、プロジェクト方式を縦横に配置するなどの工夫も必要であろう。
 職員人事制度改革では、「目標による管理のマネジメント手法」をベースにした、職能開発も組み込まれた人事評価制度も必要となろう。これは処遇に結び付く制度でもあり、職員間での十分な議論を前提としなければならない。
 ただ、基本的には、成果の有無によって評価される制度であるから、目標を達成すれば、あとは他の責任という風潮を生みかねない。この制度を導入しただけでは全体最適とはならないことも留意しておく必要がある。
 それを克服するには、職員集団の中で、部・課の壁を低くした議論や、インフォーマルな組織による相互理解などを意識的に組み込んでいき、「励まし合い」「支え合い」の「職場風土づくり」をすることも必要となる。
 人事制度の中では先述の研修も各大学の状況に応じて適切に位置付け、専門的な勉強をして能力開発に役立つ大学院進学も組み込んだらよいであろう。
 また、職能開発の一環として、大学行政管理学会をはじめ、いくつかの職員の学会や研究会などが活発に活動している。このような組織に加入して他大学の職員たちと切磋琢磨するのも相当に有効である。

職員と教員の理想的な 連携・協働のあり方

 職員と教員の連携・協働についてのポイントは、第1に、教員と職員の壁を低くした政策論議が行われるようにすることである。教授会など教学組織で論議される内容は、必ず職員組織と共有することが必要である。
 第2に、教務委員会など各種委員会や大学運営組織の正式メンバーに職員を加えることである。大学の意思決定に加わることにより職員の責任意識を高めることができる。 
 第3に、理事会や大学トップ機構の役職者に職員を登用することである。職員が能力を高め、成果を挙げて、さらに重要な責任を果たすことが可能となれば、教員と力を合わせた現代にふさわしい大学経営が行われる可能性が大きくなる。
 さらには職員同士だけでなく、教員と職員もインフォーマルな組織による相互理解ができるようになれば、職場風土づくりとして有効であろう。教員と職員が一緒になって新しい大学コミュニティを形成できる大学こそ、「21世紀型の大学」として存在価値を高めるものになると確信している。


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