アドミッションセンターが調整役のような役割を担う部署として取り組みを進めることは、学部間の連携にもつながる。
　基本的に、AO入試以外の入学者選抜は学部主導で実施しているが、学部あるいは年度によっては、入試科目の変更や募集人員の調整などが必要になる。そのような場合には、学部の案がまとまった段階で、アドミッションセンターと入試課が協力してヒアリングを行っている。全学的な見地から、大学としての方針を念頭に置いて協議を進める必要があるからだ。
　こうした手続きを経ることは、学部の視点だけではなく、他学部との関係において選抜方法を検討する機会になり、学部間の足並みをそろえることにもつながる。
　同大学のアドミッションセンターが主導して実施するAO入試の特徴として、設置以来、AO入試を実施しない学部からもAO入試委員を求め、全学入試として実施してきたことが挙げられる。全７学部のうち、AO入試を実施しない医学部と農学部の教員も、これまでにAO入試で面接を担当してきた。アドミッションセンター長の富永倫彦教授は、「AO入試は全学で実施するもの」という考え方に立ち、「『他学部の参加により、従来よりも多角的な視点で評価できる』と、委員会で説明した」という。全学委員会の改編により、この制度は2007年で終了し、現在はAO入試を実施する学部の教員で実施部会を組織化している。

　山口大学がAO入試に力を注いできた成果は、学生の姿に表れている。AO入試のアドミッションポリシーには、大学の方針である「卒業後に社会で求められる能力を最重視する」に沿って、自己アピールやコミュニケーション能力の重視を掲げている。
　各学部では、リーダーシップや各学部の内容への適応能力などを重視して合否を決めている。AO入試の募集人員は2009年度入試では127人と、入学定員の１割に満たないが、AO入試による入学者がコミュニケーション能力やチャレンジ精神を発揮し、学内でリーダーとして活躍している比率は非常に高いという。
　AO入試の中身をより充実させるための研究にも、研究開発部門を中心として力を入れている。これまでの研究テーマには、「入学者選抜における調査書利用調査」「大学進学意識と入学前後の学力・成績に関する調査分析」などを取り上げてきた。現在は、入試における面接のあり方などを研究中だ。AO入試の定員枠に関しては、増え過ぎると、本来のAO入試の目的が失われる危険性があるため、慎重に検討する考えを示している。
　アドミッションセンターを軸とした取り組みを通じて、課題も見えてきた。教員と職員は根本的に異なる組織に属するため、どれだけ接近しても連携の難しさは残る。したがって、さらに教職協働を進めるための仕組みを検討する必要がある。
　大学教育機構は、さらなる教育改革の推進を図るため、今後も教職協働ならびに学部横断の取り組みを充実させていく方針だ。