アクレディテーションは、大学として最低限の要件を確認するためのものなのだから、認定のハードルがそう高いとは思えない。
　では、一流大学と呼ばれるような大学にとってアクレディテーションは、どういう意味を持つのだろうか。以前、ペンシルベニア大学のIRオフィスのディレクターにインタビュー調査を行ったことがある。IRオフィスは、大学の目的達成のための戦略的なプランニングに欠くことのできない統計分析を、正確かつ公正に行うために設置された。
　アクレディテーションを受ける際には、IRオフィスも当然深くかかわる。しかし、ペンシルベニア大学にとっては、アクレディテーションはいわば税金を払うようなもので、認定を得ることにそれほど意義を感じていない。むしろ、学長の要求が厳しく、それに応えるほうがよほど大変だという。ただし、セルフスタディには確かな効果があるようで、学長や副学長の強いリーダーシップの下、体制が確立している。
　直近のアクレディテーションは、継続的なセルフスタディが行われていることを前提に、大学自身が選んだ特定の事項に関する限定的な評価で済ませることができた。大切なのは、大学の目的の実現をめざしてセルフスタディを実効あるものにすることで、それができていれば、数年に一度のアクレディテーションは、それほど負担ではないということだ。
　アメリカと日本では、大学が成立する歴史的な背景が異なる。しかし、政府からの押し付けではなく、大学団体が自律的に作り上げてきたアクレディテーションシステムには、お手本としたい部分も多々ある。
　中でも大学自身による自己点検の確立は、質保証全体のプロセスの中核を成すものである。日本の場合、申請担当者が各学部などを回って、迷惑がられながらデータを提出してもらった大学も、少なからずあるだろう。評価項目を見てデータを作成するのではなく、日常的に大学にとって必要なデータや情報を蓄積・分析し、認証評価に臨む際には、そこから加工して提出用の資料を作成する。そうした仕組みの構築が日本の大学にとっても必要であろう。　　建学の精神を観念的に語るだけでは改革は望めない。変化の激しい社会で大学が自身の進むべき方向を的確に判断するために、情報やデータをいかに日常的に収集し、絶えず将来を見通せる体制を整備しておけるかどうかが、大学の目的を実現するカギを握っているといっても過言ではない。アメリカのIRのような専門組織を設置することは、その有力な方策の一つとなるであろう。