大学で「キャリア教育」の必要性が指摘され、導入される直接のきっかけとなったのは、学生の就職問題である。それは単なる経済情勢や雇用環境の変化による問題ではなく、学生自身が変わってきたことによる。進路を決められない、どうしていいかわからない、卒業を先延ばしにする、といった、いわゆる進路決定ができない学生が急増した。
そのために、従来の就職斡旋(あっせん)だけでは対応できない、学生自身を何とかしないとどうにもならない、と考えるようになった。このようにして、大学はキャリア教育、あるいはキャリア支援に取り組むことになったのである。それを大学の個性化の核としようとするところも出てきて、今や「キャリア教育」は大きな流れとなった感がある。
国立大学協会発行の「大学におけるキャリア教育のあり方」(2005年)では、「就職問題懇談会」による調査結果を基に、大学のキャリア教育の現状について、右表のように指摘している。
このような現状をふまえ、同誌は次のような方向性を示している。
キャリア教育の目標として、キャリア設計能力、キャリア・職業観、キャリア・職業の選択、職業・専門能力などを明確にすることが求められる。
そのための取り組みは、(1)学生のキャリア・職業観の形成や将来設計能力の育成を意図した、計画的、集団的な教育課程上のキャリア教育の取り組み、(2)学生の進路・職業選択に関するキャリア支援・学生指導の活動、(3)結果として、学生のキャリア発達・形成に資する彼らによる自発的学習活動や課外活動等に対する支援に大別される。
以上のことから、大学におけ的な教育課程上のキャリア教育の取り組み、(2)学生の進路・職業選択に関するキャリア支援・学生指導の活動、(3)結果として、学生のキャリア発達・形成に資する彼らによる自発的学習活動や課外活動等に対する支援に大別される。
以上のことから、大学におけるキャリア教育は、基本的な目標は共有しつつ、職業・専門能力等については各大学の内容や特徴を生かすことが望ましいと考えられる。
また、具体的な取り組みは、それぞれの大学が持つ条件によって異なり、学内外での連携も必要であるが、少なくとも、安易な外部委託に頼らないように注意すべきである。いずれにしても、明確な目標設定と成果検証が必要である。
大学におけるキャリア教育は、小中高とは違った経緯が見られるが、その本質は変わらないことを認識すべきである。小中高大、さらに生涯にわたるキャリア教育・支援の枠組みを構築していくことが、今後の課題であろう。
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