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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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2つの効果検証システムで教育手法を改善

 武蔵野大学のキャリア教育が深化・発展する過程で、大きな原動力となったのが、2003年度に導入した2つの効果検証システムだ。
 一つは、ベネッセコーポレーションと共同開発した「適性適職検査」。社会的強み、進路成熟度、仕事観などを、入学時から3年生まで継続的に測定して成長度合いを客観的にとらえ、学生の自己理解を促進する。もう一つは、キャリア開発科目群の効果を検証する「自己点検アンケート」。学生の意識変化や能力開発について測定する。
 2006年度の科目再編等の改革は、これら2つの検証結果に基づいて行われた。それまでのプログラムは、職業観・勤労観の育成、目的・目標の明確化が、主体的な行動を促すという仮説に基づいて組まれていた。しかし、自己点検アンケートでは、8割以上の学生がキャリア開発科目群の必要性を認める一方、適性適職検査では、それらの科目に熱心に取り組んだ学生は6割強にとどまるという結果が出た。
 これらの結果から、「ストレス耐性の低さ、自信のなさや受け身な気質を克服することが重要」との仮説を立てた。これに基づき、自分の内面と向き合うための科目「自己の探求」を設け、いくつかの科目にグループワークを導入した。
 さらに、グループワークの検証によると、頻度を増やすほど、ストレス耐性、協調性、自主性や創造的態度などが伸びることがわかった。重要なのは、授業の内容よりも方法であるとの結論に至った。そして、専任教員によるキャリア教育という第2ステージに進むこととなった。
 キャリア教育が学生から高い評価を得ているのも、こうした緻密な検証と、それに基づく不断の改善によるものといえる。
 文学部英語・英米文学科4年生の人見敏広さんは、「大学は専門分野を追究するところ、というイメージが強かった。キャリア教育に力を入れているのは意外だったが、大学の熱意は強く感じられた。5年後、10年後の自分を思い描いたうえで現状を分析し、今、何をすべきか具体的に整理できるようになったことは、就職活動を進めるうえでも大きな力になっている」と話す。

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