９年間にわたって、段階的に改善を重ねてきたキャリア教育は、いよいよ第３ステージへと歩みを進めている。2010年度のカリキュラム改革で、キャリア開発科目群を発展的に解消し、学士課程教育全体を通してキャリア教育を推進する体制を築く。１年次の基礎課程と２年次からの学科課程に、これまでのキャリア教育の内容、効果を挙げたグループワークや効果検証等の手法を取り込む。
　キャリア開発課の中塩義幸課長補佐は、「われわれはキャリア教育自体にこだわっているわけではない。あくまで『武蔵野学士力』を育成する学士課程教育全体の中で、キャリア教育の成果も上げていきたい」と話す。
　具体的な構想としては、36科目あるキャリア開発科目群の約半分は、基礎課程の「武蔵野ＢＡＳＩＳ」（武蔵野大学の学生として身に付けておかなければいけない必須の力）の科目に組み込む。そのままの科目として移行するのは「キャリアデザイン」「自己の探求」のみ。「キャリア開発基礎」といったスキル系の科目は、「コンピュータ活用基礎Ⅰ」「日本語リテラシー」「武蔵野ＢＡＳＩＳ基礎」などに吸収する。従来の国内・海外のインターンシップに加え、「産学連携科目」も新たに配置する。
　最大の目玉は、グループワークのノウハウを生かした１年次の「基礎セルフ・ディベロプメント」だ。文理の垣根を超えた学科横断による学生の混成チームを編成し、哲学、文学、歴史学、現代学、社会学、地球学、数理学のいずれかのテーマについて、共同で研究する。最後に、グループセッション、もしくはプレゼン大会を開く予定だ。その他の科目にも、グループワークや、キャリア意識・スキルを高める要素を取り込み、シラバスに明記するという。
　これまでキャリア開発科目に限定されていた効果検証システムは、今後はすべての科目で適用していく。現在、各学科のディプロマ・ポリシーに基づいた効果指標を策定中で、それに沿ってシラバスの作成や教材の開発に取り組む。
　キャリア開発科目群がなくなってカリキュラムはシンプルになるように見える。しかし、あらゆる科目にキャリア教育的な要素を盛り込むことによって、これまで以上に運用や効果検証は複雑になる。加えて、すべての教員が何らかの形でキャリア教育にかかわることになるため、「武蔵野学士力」の理念や大学が抱くキャリア教育観を教員集団に浸透させていくＦＤも一層、重要だ。
　カリキュラムや教材の整備といったインフラ面の充実とともに、それを運用する教員一人ひとりの意識をいかに高めるかが、教育プログラム改革の成否を握る鍵といえよう。