特集

Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
  PAGE 13/55 前ページ 次ページ

大学間比較が可能な共通指標のデータが必要

 誰しも、都合の悪い情報の公表によって惹起されるかもしれない事態(社会的批判、受験者の減少)は避けたいし、自らの失敗や恥を公にすることには抵抗がある。
 しかし一方で、「誇大広告」といわれても仕方のないような、明確な根拠やデータの裏付けの乏しい「情報」は洪水のように流す大学も少なくない。「国際性が身に付く大学」「自立した個の育成」「マスコミ就職率ナンバーワン」「リーガル・マインドの育成」。学生募集用の美麗なパンフレットを開けると、こうしたうたい文句が、学部長や看板教授の笑顔、活発で親密な雰囲気の溢れるゼミ風景の写真などとともに、目に飛び込んでくる。
 しかし、こうしたうたい文句を裏付ける具体的なデータや事実がきちんと示されることは、まれである。教員の数が限られているため全員がゼミに参加できない事実や、貧弱な就職支援体制のためにニートになった学生のことは、まず示されない。
 まして、学生の卒業時の語学力や幅広い教養、専門知識・技術、批判的思考力などを客観的に評価し、大学教育を通じて具体的にどの程度の実力が身に付いたか、学生が授業や学生生活にどの程度満足しているのかといったデータを、学部・学科ごとに公表している大学はまずない。
 大学に自分の未来を預ける学生にとって、最も重要な情報は、大学がどのような教育を行い、どれだけの「実績」を挙げているか、それを「学生がどのように評価しているか」という具体的なデータ、それも「大学間で比較可能な共通の指標に基づいたデータ」である。
 例えば、どの程度の「国際性」が身に付くかを評価しようとすれば、カリキュラムの内容・構成だけでは不十分だ。カリキュラム外のさまざまな活動(例えば、国際文化交流活動)への参加率、海外留学した学生の数・比率とその具体的な内容や期間ごとの内訳、受け入れ留学生の数と国ごとの内訳や比率、外国語検定試験の合格者数や比率、外資系企業への就職者数といった情報が必要になる。さらに、学生に対するアンケート調査(例えば、その学部で学んで「国際感覚」や「異文化理解」、外国語能力が身に付いたと感じるか)の結果など、多角的なデータも重要だろう。
 具体的な進学先を決めるには、こうしたデータを大学ごとに比較して検討する必要がある。そのような形で情報開示がなされてこそ、「ミッション系の大学だから国際的なイメージがある」とか、「学長が国際政治学者なのできっと国際化にも熱心だろう」といった、あいまいな形での大学選択や進路指導は淘汰されていくことになるであろう。


  PAGE 13/56 前ページ 次ページ
目次へもどる
大学・短大向けトップへ