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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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合格の早期決定が学力・意欲の低下を助長

 「特別入試」として始まったこれらの制度は、「特別」でなくなったがための、さまざまな弊害が指摘されている。
 その一つは、大学が早期に入学者を確保する手段になっているのではないか、というものである。そもそもAO入試は、選抜方法・実施時期に明確な規定が存在しない。エントリーシートの提出、進学相談会等への参加を「エントリー」と呼び、この時点で選抜を開始する大学もある。エントリー後の事前審査を経て出願前に合格が内定する方式、事前審査・出願・試験の工程を経て合格を決定する方式など、パターンが分かれる。エントリーも事前審査もなく、出願・試験のみで選抜するケースもあり、合格決定までのプロセスが大学によりさまざまで、複雑化・多様化している。

図表2:私立大学におけるAO入試の実施時期(2009年度)

 図表2に、私立大学における2009年度AO入試の実施時期を示した。エントリーは6月1日、7月1日、8月1日に集中している。出願のピークは9月上旬で、その時点で合格が内定している生徒もいる。早々と進路が決まったAO入試合格者は学習意欲をなかなか維持できず、授業にも身が入らないといわれる。高校で修得すべき基礎学力が身に付かないまま大学に入学してしまう生徒が続出することも問題視されている。
 二つ目の問題として、志願者の学力が十分把握されていないことが挙げられる。一部の大学を除き、推薦・AO入試では学力検査が実施されない。2008年12月の中央教育審議会答申「学士課程教育の構築に向けて」でも触れられているように、推薦・AO入試を実施する学部のうち、高校の評定平均値を出願要件としている大学は、それぞれ7割と1割にとどまる。大学での教育に必要な能力等を判定するのが「入試」ならば、今後は基礎学力の把握も求められるだろう。
 多くの大学は、早期に進学先が決定した生徒に対して、基礎学力の育成、学習意欲の維持を目的とした入学前教育をはじめとする対策を講じている。2005年度、ベネッセコーポレーションがAO入試実施大学を対象に行った調査では、AO入学者に入学前教育や導入教育を行った大学は7割に上った。


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