周知のように特別選抜制度の拡大は、「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について(第2次)」(1997年)と、「初等中等教育と高等教育との接続の改善について」(1999年)の2つの中央教育審議会答申によるところが大きい。前者は「選抜方法の多様化や評価尺度の多元化、受験機会の複数化」という文脈で推薦入試の拡大を求め、後者は「受験生を多面的かつ丁寧に見る」選抜方法としてのAO入試の可能性について言及したのであった。
こういった多様化、多元化、複数化は、一発勝負的な入試制度の問題や大学の序列化を改善するための方策として、間違いではない。しかし、推薦・AO入試が急速に普及する中で、実際に得られる多様化の内実や、評価尺度の多元化の具体的手法について検討する機会は、必ずしも十分ではなかったのではないか。
その中で、例えばAO入試については、選抜性の高い入試、対話型の入試、推薦入試の選抜方法をブラッシュアップした入試など、各大学が独自性の高い方式を実施することになった。また、全入時代の到来が叫ばれる中で、大学と受験生との合意で入学が決まるというAO入試の特性に着目して導入した大学、さらには定員充足の手段として導入せざるを得ない大学もあったであろう。
単に選抜方式が複数化しただけではなく、新方式の導入によって何を打開したいのかという大学、学部、学科の事情もまたさまざまであったことから、入試の多様化はいわば乗数的に展開されることになった。 |