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Between(株)進研アドが発刊する高等教育のオピニオン情報誌
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高校教員の声を受け選考の期間・内容を変更

 検証①からは、学部・学科によって入試区分ごとのGPAの傾向が異なることがわかった。一部の学部ではAO入学者のGPAに深刻な状況も見られたが、一方で、AO入学者のGPAが高いケースも散見された。
 ②では、特に自由記述から、AO入試導入に反対していた教職員は、その成果について否定的な意見を持つ傾向にあることがわかった。
 ③では、総論は賛成であるが、募集人員が少ない入試に対する受験指導のコストの大きさや、早期の入試が高校教育に与える影響等を問題視していることが判明。各高校の進路指導方針や高校と大学との相対的なポジショニングも、評価に影響を与えることがわかった。
 ④では、合否判定の妥当性、早期の出願時期、出願から合格発表までの期間の長さ等が指摘された。これに対しP大学では、出願前エントリー制の廃止、9月第1週から第2週への出願時期の変更、書類選考のみであった第1次選考への面接導入、出願から合格発表までの期間の短縮等の改善を図った。その結果、高校の評価が向上した一方で、学内の負担が増大し、第1次選考の面接導入に対する賛否も分かれ、学内教職員の評価は低下した。この場合、どちらの評価を重視するかは、トップマネジメントの判断に委ねられる。
 ⑤では、AO入試合格者が対象であるためポジティブな評価が多かったが、自身が合格したにもかかわらず、判定の妥当性に問題を感じる者も一部存在することがわかった。
 ⑥からは、さまざまな知見が得られた。AO入学者の大学への期待は大きいが、入学後にギャップを感じる者が少なくない。学生満足度は学年進行に伴って高まるが、授業の満足度より自主的な活動の満足度が高い。AO入試に対する社会の低評価が原因でコンプレックスを持つ者が少なくない。多くの者が、サークル等の組織活動でリーダーシップを発揮したり、海外ボランティアやインターン等の積極的な活動を行ったりしているが、それを教員があまり認知していない。
 プレゼンテーション、グループ討論、ものづくり等の選抜方法で入学しただけに、入学後もペーパーテストやレポートだけではない多様な成績評価方法を希望したり、リーダーシップを磨くためのプログラムの開設を要望したりする声もあった。
 以上、総じて、学内教職員はGPAを中心に入試制度を評価するが、受験者側の高校教員は合否判定の妥当性等の制度設計や受験者への配慮等を評価することがわかった。AO入学者はコンプレックスを感じながらも、APに即した学内外の活動に自主的に取り組み、学生生活を充実させていた。ただし、進級の可否と満足度には相関があり、特定の学部ではAO入学者のGPAの低さや留年率の高さが有意に見られ、覇気をなくすケースも確認された。


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