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規範意識と問題行動 〜第2回〜
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中高生の喫煙に対する意識をみてみると、中高生全体で「タバコは健康に良くないので大人になっても吸わないつもりだ」との回答が79.3%ともっとも多く、次いで「自分がタバコを吸わないだけでなく周りの人にも吸って欲しくない」が59.6%、「未成年者がタバコを吸うとより身体に悪影響がありそうだ」が43.3%と続く。上位にあがった項目は、いずれも高校2年生に比べて、中学2年生のほうが高い割合になっている。
法律で禁止されているから喫煙を行わないということだけではなく、喫煙の害を正しく認識した回答の割合が高くなっていることがわかる。中高生の喫煙に対する意識は、ここ数年の中高生の喫煙率の減少(『健康』第2回【2-4】参照)とも合致しており、近年、学校等で行われている喫煙防止教育の成果といえるのではないだろうか。
「万引についてあなたはどのように考えますか」という問いに対して、「絶対にやってはいけないこと」との回答が小学生では95.2%と多いが、中学生では83.2%、高校生では80.9%と徐々に減少し、学校段階が上がるにつれて犯罪意識が薄れていくことがわかる。
「万引についてあなたの友達はどのように考えていると思いますか」という問いに対しては、「絶対にやってはいけないこと」と答えた割合が、自身の場合と比較していずれの学校段階でも低くなっている。その差は学校段階が上がるにつれて大きくなり、小学生では3.9ポイント、中学生では11.7ポイント、高校生では17.3ポイントの開きがでている。
高校生になると3割を超える子どもが周囲の万引きに対する犯罪意識の薄れを感じており、万引きが身近で行われている事実を認識しているようすがうかがえる。
また、「万引をするよう誘われたことがある」と答えた児童生徒の割合が学校段階とともに増加しており、万引きをするように誘われることが、友だちの犯罪意識の薄れを感じさせる一因となっているものと考えられる。
高校生の性行動(性交)経験率の経年変化をみてみると、1974年から2005年にかけて、男女共に大きく上昇(男子10.2%→26.6%、女子5.5%→30.0%)していることがわかる。
1970年代から80年代までは男女ともわずかな伸びであったが、1993年から1999年にかけて、男子は14%から27%と約2倍、女子は16%から24%と約1.5倍の増加がみられる。その後、1999年から2005年にかけて、男子の性行動経験率はほとんど変化していないのに対して、女子では6ポイントほどの上昇がみられ、男子の経験率を上回る結果となっている。
また同調査では、年齢別の性行動経験率の経年変化も示されているが、経験率が急激に上昇するのが、1981年には20歳頃(大学生)であったが、2005年では16歳頃(高校生)にまで早期化している。このことは、高校生の経験率の上昇と一致する。
中学生の経験率は、もっとも高い2005年女子で4.2%と、高校生に比べると非常に低い値であるが、男女それぞれの増減は、高校生と似たような傾向にある。
少年非行に影響を及ぼす社会風潮について何が問題かを複数選択してもらった結果をみると、「社会全般の規範意識(モラル)が低下している」(57.8%)、「他人の子どもに無関心である」(54.7%)、「社会全般に心の豊かさや思いやりの心が失われている」(45.6%)が上位3つを占めた。
このことは、多くの人が少年非行を大人社会の抱える問題の結果としてとらえており、社会全般のモラルの低下や人々の心の状態に危機感を抱いていることの現れであるといえよう。
「家出、無断外泊、深夜はいかいなどに対して、あまり厳しくない社会である」、「喫煙・飲酒などに対して、あまり厳しくない社会である」、「援助交際に関して、あまり厳しくない社会である」、「覚せい剤や麻薬、シンナーなどの薬物の使用に関して、あまり厳しくない社会である」などの回答が、それぞれ3割前後あり、非行行為に厳しくない社会風潮に対する指摘も多い。